1993年
著者:菅野長右エ門
所属:宇都宮大学農学部

  • 健康科学
  • 分析・その他基礎研究

研究目的

 牛乳はリボフラビン(ビタンミB2、RF)に富む食品である。牛乳にはRFの他に、その誘導体であるフラビンモノヌクレオチド(FMN)・フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が含まれ、その大部分が遊離の形で、約15%がタンパク質と結合した形で存在している。フラビンはいずれもRFの形で腸管から吸収され、その後RFの補酵素型に変換したFMNやFADは生体の電子伝達系の基幹酵素である各種フラビン酵素の活性の発現に不可欠であり、これらの作用を通してRFは成長因子として機能している。
牛乳のフラビン誘導体(主にRF、FMN、FAD)の含量と組成はこれまで明確ではなく、このことを明らかにすることは栄養学的観点からも重要であり、それにはフラビン誘導体の簡易な分離・定量法を確立する必要がある。最近、Roughead & McCormickは牛乳に10-20%の10(-2'–hydroxyethyl) flavin(HEF)が存在し、しかもこのHEFはRFの腸管吸収を阻害するばかりでなく、f1avokinaseを拮抗的に阻害することを報告している。我々は、ここ数年間に渡る牛乳のRFについての研究を通して、HEFを検出していない。むしろHEFは彼等の用いた複雑な方法により引き起こされたアーティファクトの可能性が大きいと推察されるが、彼等の方法を追試し、HEFの牛乳での存在の有無を確認する必要がある。
これまでの助成によって、牛乳のフラビン誘導体(RF、FMN、FAD、その他)を簡易に分離定量する方法を確立し、Roughead & McCormickによる方法を追試し、牛乳にHEFの存在しないことを明確にした。本年度は、我々の定量法2lによって、1)牛乳およびその画分における全フラビンおよび結合型フラビンの三態(RF、FMN、FAD)の含量と分布を明らかにした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021tvd.html

2015年9月18日