1993年
著者:三宅浩次
所属:札幌医科大学公衆衛生学講座

  • 健康科学
  • 各ライフステージ
食習慣の良否が健康に関連するもっとも重要な要因の一つであることには疑いの余地はないものと思われる。しかし、食習慣の科学的把握は、けっして容易なものではない。疫学研究の中でも食に関する方法論は、種々模索されているが、決定的な調査方法は存在していない。わりあい単純で信頼性もあるということで多用されているのは、頻度法であろう。しかし、この方法にしても長い生存期間の一断面を切り取っているだけであり、慢性疾患のような長期にわたる食習慣の影響を研究するためには、問題も少なくない。
われわれは、長期の生活習慣が、その後の健康にどのような影響を与えるかを明らかにする目的で、北海道内においていくつかのコホート集団を設定し、観察を続けてきた。昨年度の報告では、1984年と1985年の2カ年に基礎調査を完了した北海道第一次産業コホートの毎年の観察において、1991年末までに把復された生存者と死亡者の多変量ロジスティック解析の比較から、食習慣では「多食で、野菜摂取少なく、牛乳を飲まず、山菜を多く取っている」ものが死亡群で高リスクになることを報告した。この場合、多変量解析であるから、ある程度の交絡要因(性、年齢、職業[農業対漁業等]、基礎調査時健康状態、喫煙習慣、調査表記入者が本人か等)は消去されている。しかし、食品の一つ一つでは、統計学的に有意の関連はなく、上記4項目を合わせると有意になるという点で、まだ検討しなければならない課題が残っている。また、基礎調査時から6、7年経過していることもあり、生活習慣に変化が生じていることも考慮しなければならない。
そこで、今年度は1993年末に行った第一次産業コホート調査で、基礎調査時と同一の生活習慣項目を比較し、8、9年経過しての変化、本調査の信頼性、交絡要因の可能性を解析し、興味ある結果を得たので報告する。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021tvd.html

2015年9月18日