1992年
著者:菅野道廣
所属:九州大学農学部

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

牛乳たん白質、とくにカゼインはラットにおいてリノール酸のアラキドン酸への転換を促進し、さらにはエイコサノイドの産生をも刺激するが、われわれはカゼインのこのような効果は、リノール酸代謝が抑制された状態でより顕著であること観察してきている。この代謝系は種々の疾患や老化に伴って低下し、そのことが病態を悪化し老化を促進する可能性がある。本研究は、病態ならびに老化に伴うリノール酸代謝能低下の改善に対する牛乳たん白質の有効性を明かにし、最終的には機能性食品の素材としての適河性を検討することを目的としている。
エイコサノイドは体内でさまざまな生理活性を発揮するが、複雑多岐にわたる代謝機能の維持のためには、その産生のバランスが必須の要件である。近年、誤った食生活の結果として、動脈硬化、高血圧、糖尿病、肥満などのいわゆる成人病が多発し、高齢化とあいまって国民健康を著しく脅かしてきている。このような疾病時ないしは加齢に伴って、エイコサノイドのインバランスによる病態の悪化や老化の促進が考えられるので、適切な食物の選択によってこの代謝異常を改善することは、きわめて重要で喫緊な研究課題である。このような研究は、牛乳たん白質の特異的機能の日常の食生活への活用のために有用な知見をもたらすものである。
今年度は食餌コレステロールに対し敏感に反応し顕著な高コレステロール血症を呈するExHCラットをモデル系として食餌たん白質の効果を比較検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021uzy.html

2015年9月18日