1991年
著者:大内尉義
所属:東京大学医学部老年病学教室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

高血庄と肥満、耐糖能異常ないし糖尿病が高頻度に合併することはよく知られており、この病態がSyndrome Xとして注目されているが、その機序は不明であった。これらはいずれも動脈硬化の危険因子であるが、それらが併存していると心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが飛躍的に高まることから、その病態を解明することはきわめて重要と考えられる。最近、高血圧者に高頻度に糖代謝異常の存在することが明らかにされ、高インスリン血症が共通の病因として注目されている。また肥満が高インスリン血症を伴うこともよく知られている。インスリンが昇圧的に働く機序については、腎尿細管でのNa+の再吸収の亢進、交感神経活動の亢進、細胞膜のNa+-H+交換の亢進など種々の説が提出されているが、いまだ十分解明されていない。
一方、この高インスリン血症は組織レベルでインスリン抵抗性が存在することを示すものであるが、インスリン自体ではなく、このインスリン抵抗性の存在が高血圧との関連で重要である可能性もある。そこで、本研究は、インスリンおよびインスリン抵抗性の、高血圧の発症、維持における役割とその機序を主として血管作動物質の血管壁細胞内Ca++代謝に及ぼす影響という観点から検討し、さらにカルシウム摂取など食餌によるinterventionが、それらにどのような影響を及ぼすかを検討することを目的としている。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ull.html

2015年9月18日