1990年
著者:太田孝男
所属:熊本大学医学部小児科

  • 健康科学
  • その他

はじめに

HDLが動脈硬化性心疾患の防御因子である事は多くの疫学的研究から明らかである。しかし、その細胞及び分子レベルでの防御のメカニズムに関しては、未だ詳細は不明である。これまで、HDLは比重の違いに基づき超遠心法で分離されていた。しかし、最近の研究によれば、超遠心操作中にはHDLの組成の一部がHDL粒子から脱落し、本来のHDLと分離されたHDLが異なる事が明らかになっている。私達は最近超遠心法に代え、免疫学的手法を用いてHDLを自然な状態で分離する方法を確立した。具体的には、HDLの主要構成蛋白である、アポA-I及びアポA-IIに対する抗体カラムを作製し、HDLをアポA-I含有リポ蛋白(A-1Lp)として血清より分離している。A-1Lpはさらに抗アポA-IIカラムを用いて、アポLpA-1のみからなるLpA-1とアポA-I、A-IIを持つLpA-I/A-IIに細分画している。これらを用いた最近の私達の研究から、LpA-Iが抗動脈硬化作用の主役らしい事が解ってきている。また、LpA-Iが腸管から分泌されている可能性を示唆するデーターも得ている。これらの研究結果は、食事組成を変化させることで、LpA-Iを増加させ、動脈硬化発症を防止できる可能性を示唆している。本研究では食事内容とHDL機能の関連解明の第一歩として、脂肪(バター)負荷がA-ILpの組成及び、構造に及ぼす影響を検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021u7u.html

2015年9月18日