1990年
著者:上野川修一
所属:東京大学農学部農芸化学科畜産物利用学研究室

  • 健康科学
  • 免疫・感染防御・アレルギー・がん
  • 分析・その他基礎研究

目的

乳は新生哺乳動物の唯一の食品であり、多くの生理活性物質が含まれていると予想できる。しかしながら、それらは未同定であったり、生体内での活性が未知である場合が多い。本研究では牛乳中の成分について、培養小腸上皮細胞の増殖、分化に影響を及ぼす成分を検索した。体内に取り込まれた食品は小腸において消化、吸収されることから、乳などの食品成分が実際に体内でも小腸上皮細胞と直接相互作用し、何らかの機能を及ぼしている可能性がある。ここでは、ラット乳児由来の確立された小腸上皮細胞株(IEC-6)を乳成分と共に培養することによって、細胞の増殖や分化への影響を調べた。器官や動物体を用いた実験とは異なり、培養系を用いることによって、上皮細胞と物質との相互作用を他の成分や細胞の影響を受けずに活性成分の検索をすることができると考えられる。IEC-6は、細胞増殖因子として良く知られているEGF、トランスフェリンなどによって増殖し、TGF-βによって分化が誘導されることも既に研究されており、小腸上皮細胞の増殖、分化を調べるうえで良いモデルになると期待できる。ここでは、この細胞の増殖をMTTアッセイで調べ、また分化の誘導をアルカリフォスファターゼ(ALP)及びマルターゼの活性上昇を測定することによって検定した。また、乳成分としてヒトカゼイン及びそれを消化酵素によって分解したものの活性を調べた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021u7u.html

2015年9月18日