1988年
著者:山内邦男
所属:東京大学農学部農芸化学学科畜産物利用学研究室

  • 健康科学
  • 分析・その他基礎研究

目的

 牛乳の主要蛋白質であるカゼインを消化酵素で分解した際に生成するペプチドの中には様々な生理的機能を持つものが存在することが、近年多くの研究者によって報告されている。我々は牛乳や人乳のカゼイン分解物がマウスの繊維芽細胞の増殖(DNA合成)を促進することを見いだし、カゼインが単なるアミノ酸給源としてではなく、細胞増殖因子の前駆体として乳幼児の身体の発育に寄与している可能性を示唆してきた。また、牛乳カゼイン由来の細胞増殖促進ペプチドはβ-カゼインの117-183番目に相当するフラグメントであることを認めた。このペプチド、β-CN(f117-183)はアンジオテンシン変換酵素の阻害活性を示し、また肝細胞における尿素合成を促進する性質を持つことも報告されていることから、多機能性ペプチドとして関心を集めている。しかし、このようなペプチドが、他の増殖因子とは全く別個に、単独で細胞の増殖を引き起こし得るものなのかについては明らかではない。我々は今回、このペプチドがどのようなメカニズムで細胞の増殖を促進するのかについて考えると共に、牛乳カゼイン中に他にも同様のペプチドが存在しないか検討した。さらに、このようなペプチドが消化管細胞に及ぼす影響についても若干の実験を試みた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021rwd.html

2015年9月18日