1988年
著者:山本章
所属:国立循環器病センター研究所病因部

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

目的

栄養の過剰摂取が、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などを通じて粥状動脈硬化の進展に寄与して居り、日本もまた西洋工業国並みに虚血性心疾患の増加することが危倶されている。食餌中のコレステロールそれ自体が血清コレステロール値の上昇に寄与することは勿論であるが、総エネルギー摂取量及び飽和脂肪酸、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸といった、乳汁中に多く含まれるものが肝臓でのコレステロール合成を増加させるというデータが報告されている。しかし乳汁中には逆にコレステロール合成を抑える物質も幾つか見出されて居り、牛乳をそのものとして飲用した場合に血清コレステロールにどの様な影響を与えるかについて、日本人を対象としたデータは少ない。また体質による固体差の大きいことも否定出来ない。
昨年度の研究において、牛乳(ロングライフミルク1日1本200ml)の服用によって2週間後に血清コレステロール値は平均11mg/dl上昇したが、4週後には上昇は6人中3人(平均6mg/dl上昇)に止るというデータが得られた。これに対して蔗糖添加で等カロリーにした脱脂乳飲用の場合には2週後には平均11mg/dl低下し、4週後にはこの低下が6mg/dlと前値への回復傾向が示された。この結果は欧米で報告されているものと同様の傾向、即ち乳脂肪がコレステロールを上げ、脱脂乳成分は下げるという事実を示すものであるが、4週後には前値への回復傾向がみられることは慣れの可能性を示唆するものである。そこで今年度は班長(内藤博士)の指示によって3ヶ月の長期投与実験を行った。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021rwd.html

2015年9月18日