小児期からの成人病予防
1986年
著者:村田光範
所属:東京女子医科大学付属第二病院小児科
はじめに
第二次世界大戦後の日本の社会的、経済的変貌は著しいものがあり、この結果成人の疾病構造にも大きな変化が見られている。すなわち、戦前から戦後にかけて猛威を振るった結核は昭和25年ごろから急速に減少し始め、これに代わって脳血管障害が成人死亡原因の第一位を占めるようになったのである。この脳血管障害も昭和45年ごろを境にして減少傾向を示すようになり、昭和55年ごろには悪性新生物に一位の座を空け渡し、ついに昭和60年には心疾患に二位の座も奪われたのである。このような傾向は世界のいわゆる先進国に見られるものであり、その大きな原因は平和で豊かな都市型文化生活の持つ弊害にあるといえるのである。都市型文化生活の共通した特徴は、いつでもどこでも食べることができる、体を動かさなくてすむし(交通機関の発達)、動かすこともできない(時間と場所がない)、夜型の生活リズムになりやすいといったことである。この都市型文化生活の影響は小児にも大きな影響を与えており、そのため小児の食生活や運動習慣が大きく変わってきている。小児の食生活や運動習慣が変わったことにより具体的には、成人病危険因子、いいかえれば動脈硬化促進危険因子(以下単に危険因子)が小児のうちから見られるようになったのである。そこで、われわれは、昭和50年ごろより小児期の危険因子についての基礎的な研究をしてきたが、昭和59年より八日市場市、昭和60年より秋田県大館市近郊の田代町に告いて、前者は主に幼児、後者は主に中学生を対象にして経年的に危険因子として肥満、高血圧、血清脂質、家族歴、食生活調査を行ない、成人病の一次予防のための実践活動をしてきたので、ここでは昭和61年度に行なった成績のうち主に危険因子について報告する。
書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021qen.html
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