2021年
著者:竹森 洋
所属:岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科

  • 健康科学
  • 分析・その他基礎研究

【要旨】

エクソソームは細胞から分泌される微細な細胞外⼩胞で、培養細胞上清のみならず、⾎液、⺟乳などに存在しその機能が着⽬されている。しかし、エクソソームのサイズが100nm前後と⼩さいことに加えて、⽣物種を超えた定量⽅法が存在しないことが、産業応⽤において障壁となっている。
GIF-2250は⽣細胞特異的な環境応答性の細胞内⼩胞ライブイメージャーである。⼀⽅で、“⽣きているとは⾔えない”エクソソームも染⾊可能である。そこで本研究では、エクソソームを⼤量に含有する⽜乳(ミルク)を原料として、GIF-2250の標的物質を探索することでエクソソームを染⾊できる機構を解明した。また、GIF-2250が簡便にエクソソームを定量できることを利⽤し、⽜乳からミルクエクソソームの⼤量・簡便精製法を開発し、その⽣理活性作⽤の探求に役⽴てた。
ミルクエクソソームに⼤量に含有される物質をGIF-2250の標的物質と想定し蛍光強度で評価した。結果、リン脂質、RNA、NAD+などと反応することが判明した。新鮮及び劣化ミルクエクソソームで⽐較したところ、GIF-2250の輝度に違いが観察された。次に、市販の⽜乳からエクソソームを簡便に精製する⽅法を構築した。結果、新鮮な低温殺菌⽜乳にミルクエクソソームの⼤量含有が⽰された。また、エクソソームマーカー(CD9・CD81)量とGIF-2250の輝度に相関が⽰された。更に⾼温殺菌⽜乳を原料としたヨーグルトから乳酸菌由来と予想される乳酸菌エクソソームも⼤量に精製することもできた。
これらエクソソームの⽣理作⽤を培養細胞でスクリーニングしたところ、抗炎症活性が⾒出せた。我々独⾃の炎症症腸疾患モデルで効果を検証したところ、痔に対して効果が確認できた。以上より、GIF-2250はミルクエクソソームの簡便定量及び品質評価・管理での利⽤が期待される。今後はGIF-2250を利⽤した⾷品・化粧品分野でのエクソソーム品質評価⽅法に対するJIS規格策定や、新たな臨床検査プローブとしての開発を目指す。

2024年1月17日