2019年
著者:松井康素
所属:国立長寿医療研究センター ロコモフレイルセンター

  • 健康科学
  • その他

【要旨】

健康寿命の延伸、介護予防が喫緊の社会的課題であり、ロコモ、フレイル、サルコペニアの予防・改善が重要である。⽜乳摂取の多い群でサルコペニアの危険性が低くなることや、⾎清ビタミンDの低濃度が転倒のリスクの⼀つとして知られている。本研究は、当センターのロコモフレイル外来受診者を対象にロコモ、フレイル、サルコペニアの疾患レジストリより乳製品の摂取とフレイル・ロコモ度・サルコペニアへの影響について横断的に調査し、また介⼊研究として、同レジストリから参加者を募り、⽜乳またはヨーグルト摂取習慣に加えて、ビタミンDの併⽤摂取と運動による相乗作⽤の有無についての探索的な研究を⾏った。横断的に調査の結果からは、乳製品の摂取習慣があるものは、摂取習慣がないものに⽐べ、フレイルの割合が少なく、⼿段的ADLが⾼く、椅⼦⽴ち上がりの機能は⾼い傾向がみられた。本研究では、乳製品以外の⾷品の摂取頻度については検討を⾏っていないが、乳製品摂取習慣のある群の⽅が⾎清25-OHビタミンDやビタミンKの指標であるucOCの結果が良好であったことから、⾷品の摂取の多様性が⾼いことが推察された。よって、乳製品摂取の習慣が⾃⽴した⽣活に必要な機能(IADLや椅⼦からの⽴ち上がり)を保ち、フレイル予防効果が期待できることが⽰唆された。探索的な介⼊研究では、ビタミンDサプリメントの有無にかかわらず、膝伸展筋⼒が増加し、除脂肪量の有意な増加を認め、ビタミンDサプリメント服⽤群では、握⼒の増加及び外側広筋において筋質の改善する可能性が⽰唆されたが、歩⾏速度や⼤腿四頭筋の筋断⾯積に対する効果については、不明であった。⽜乳・乳製品摂取の習慣が⾃⽴した⽣活機能を維持し、加えて家庭での簡単な運動習慣を促すことで、フレイルの予防に寄与する可能性が⽰唆された。

2024年1月17日