2016年
著者:高垣 堅太郎
所属:ライプニツ脳科学研究所

  • 健康科学
  • 精神・神経・睡眠・脳機能・認知機能

要旨

 本研究はプレーンヨーグルトによって腸内細菌叢を調整することによる、記憶・学習・ストレスなどの高次脳機能への影響を調べることを長期目標とする。とりわけ、小児医療で頻繁に遭遇する抗生物質使用条件下(腸内細菌叢撹乱条件化)に注目し、腸内細菌叢の抗生物質使用による撹乱が長期記憶とストレスにどのような影響を及ぼすか、さらにはその影響がヨーグルトの投与によって緩和できるかどうかも前臨床的に試験した。よって作業仮説としては、抗生物質投与状態では腸内細菌叢撹乱により高次学習行動に支障が見られ、これがヨーグルトの同時投与により解消されるのではないか、と考えた。この前臨床試験を行うに当たっては、複雑な大脳皮質依存性学習のモデルである、スナネズミによる聴覚識別モデルを用いた。
 本研究では生物学的に有意な抗生物質使用条件下での行動の撹乱は見られ、ヨーグルトの同時投与によってこれは解消された。ただし、さまざまな理由により、中心的な学習指標であるデルタ値において統計的有意にはいたらなかった。考察部ではこの原因を精査し、今回の研究から得られる改善点、今回の研究を予備研究とする追加研究の展開などを考えてゆく。
 

2018年3月13日