2016年
著者:川田 智之
所属:日本医科大学

  • 健康科学
  • 高齢者
  • 精神・神経・睡眠・脳機能・認知機能

要旨

 自覚的健康度に関する問診は、国民生活基礎調査で使用され、生命予後に関連する指標として、広く使用されている。また、高齢者の抑うつ状態も、その後の生活の質や生命予後に関連すると言われている。地域で暮らす高齢者を対象に、「健康状態が良好でない」(ふつう、悪い、非常に悪い)と標準的質問紙による「抑うつ傾向あり」を予測する要因を検討した。
 開業されている群馬県医師会会員のもとに、1998 年時点で通院されている85 歳以上の男女高齢者529 名(男性205 名、女性324 名)を調査対象とした。持病はあるが、比較的コミュニケーションのとれる対象者について、自記および面接補助にて、30 歳代および調査時点での牛乳摂取頻度を含む、問診票への回答を求めた。
 使用した変数は、性、年齢、ブレスロー健康習慣得点(喫煙、飲酒、運動、睡眠、朝食、間食の各項目について、望ましい習慣を1 点とする6 点満点で評価し、4 点以下を陽性と判定)、30歳代におけるミルク摂取頻度(6 択で、“週2 回以上”を陽性と判定)、および現在のミルク摂取頻度(3 択で、“よく飲む”を陽性と判定)である。過去および現在のミルク摂取頻度と健康との関係を、地域在住の高齢者で検討したものである。栄養学的視点のみならず、社会経済状態を反映する指標として「過去のミルク摂取頻度」を考えた。
 抑うつ判定には、Total Health Index Questionnaire (THI) を用いた。本質問票は、130 個の質問文に3 択で回答するもので、そのうち20 個の質問(それぞれの回答に1 点から3 点を付与)得点の合計を求め、カットオフ値22 点以上を抑うつ傾向ありと判定するものである。
 解析は、「健康状態が良好でない」および「抑うつ傾向あり」を予測変数とした、多重ロジスティック回帰分析を用いて、各変数の寄与に関する統計的有意性を調べた。
 

2018年3月13日