腸間膜リンパ液を用いた牛乳の腸管免疫機能評価
2016年
著者:前島大輔
所属:信州大学医学部 メディカル・ヘルスイノベーション講座
要旨
牛乳の投与による腸管免疫機能への影響を調査するため、ラットの腸間膜リンパ管カニュレーションを用いた腸管免疫機能評価法を確立し、採取したリンパ液を用いて腸管免疫機能を評価することを目的に実験を行った。
Wistar 系雄性ラット(体重300~330g)を用い、実験前日夕方より絶食・絶水させた。実験当日にイソフルランによる吸入麻酔を施し、気管挿管後人工呼吸器に接続した。イソフルラン麻酔下で伏在静脈に点滴(生理食塩水1ml/hr)を導入し、腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した。牛乳投与の1 時間前よりリンパ液の採取を開始し、牛乳投与後4 時間まで1 時間おきにリンパ液を経時的に採取した。得られたリンパ液の液量・リンパ球数の計測およびフローサイトメトリーによるリンパ球のサブセット解析(T 細胞・B 細胞比率)、およびリンパ液中のIL-22 濃度測定を行った。
その結果、牛乳の投与によりリンパ液量は増加し、リンパ液中のリンパ球数が増加する傾向が見られた。リンパ球サブセット解析では、T 細胞・B 細胞比率に大きな変動は見られなかった。リンパ液中のIL-22 は、牛乳投与後に一時的に濃度が上昇する傾向が見られた。
以上の結果から、牛乳中の何らかの成分が腸管リンパ組織やリンパ球、粘膜固有層に存在する自然リンパ球ILC-3 の活性化を介して、腸管の恒常性維持に役割を果たす可能性があると考えられる。