2016年
著者:藤田 聡
所属:学校法人立命館

  • 健康科学
  • 骨・筋肉・体脂肪量調節・運動機能・スポーツ

要旨

 本研究ではアスリートに観察される疲労骨折を栄養摂取により予防できるか否かを検討するために、豊富なカルシウムを含み、疲労骨折リスクの低下が示されている乳飲料とカルシウム代謝調節だけでなく、破骨細胞分化誘導能を持つ炎症性サイトカインの抑制効果を持つビタミンD サプリメントを単回の高強度運動前に併用摂取させ、骨代謝に及ぼす影響を検証した。さらに長期臨床試験において、アスリートにおける骨代謝を改善し、疲労骨折を予防できるか否かについて検討を行った。
 一過性運動実験においては、75%V・O2max に相当する走速度での60 分間のトレッドミル運動を実施した。被験者は、運動の前日にビタミンD サプリメント (100,000 IU) 摂取および運動1時間前から乳飲料を摂取する群 (MK+D)、プラセボと乳飲料を摂取する群 (CON) およびプラセボ摂取群 (CON) の3 群に分け、運動前後の副甲状腺ホルモン (PTH)、腫瘍性壊死因子α (TNF-α) 、骨吸収マーカー (CTX) および血中ビタミンD (25(OH)D) を測定した。長期介入実験においては、6 か月間毎日、乳飲料およびビタミンD サプリメント (1000 IU) を摂取する群 (MKD) および対照群 (CON) の2 群に分け、介入前、3 か月後、6 か月後に測定を行い、PTH、TNF-α、CTX および25(OH)D 並びに骨密度を測定した。
 一過性の運動前の乳飲料およびビタミンDサプリメントの摂取は血中のカルシウム濃度を高め、PTH 分泌を抑制することで骨吸収を抑制した。また、長期間の介入においては、炎症性サイトカインであるTNF-α の抑制が認められた。したがって、乳飲料およびビタミンD サプリメントの併用摂取は、PTH およびTNF-α の抑制を介して骨量維持に関与する可能性が考えられた。しかし、長期実験において骨密度への効果が認められていないことや、疲労骨折の予防効果については検討できていない。したがって、介入期間や乳飲料およびビタミンD の摂取量の調整等、今後さらなる検討が必要である。
 
 ※平成28年度「牛乳乳製品健康科学」学術研究

2018年3月13日