2018年
著者:池本 真二
所属:聖徳大学 人間栄養学部 人間栄養学科

  • 食育・教育
  • 中学・高校生

研究成果の概要

 思春期の食事は、成人期へとつながることが報告されているため、重要であると考えられる。特に、思春期において、様々な栄養素源となる牛乳の摂取量が成人期の骨密度に影響することが報告されているため、思春期において栄養素の摂取量を満たす目的も含め、牛乳を多く摂取することが推奨されている。しかしながら、日本人の思春期における栄養素および牛乳摂取量の推移を示した研究は実施されておらず、食育を実施する上での根拠が乏しい。そのため、日本人の思春期を対象に栄養素および牛乳摂取量の推移を縦断的に調べる必要がある。そこで、本研究では、日本人中学生を対象に、①2年間の牛乳摂取量および牛乳摂取への態度の変化を縦断的に検討する、②家庭での牛乳の手に入れやすさが栄養素摂取量の適正さに与える影響を検討する、の2つについて検討することを目的とする。
(1)2年間の牛乳摂取量および牛乳摂取への態度の変化に関する縦断的な検討
 対象者は、男子中学生21名および女子中学生25名である。中学1年次から3年次まで、毎年5月に、栄養素および食品群摂取量を評価するために、過去1ヶ月間の食習慣を尋ねることができる簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ15y)およびライフスタイルに関する調査票を用いて、調査を実施した。牛乳は、普通牛乳と低脂肪牛乳を合わせた摂取量とすることとした。
 男子中学生においては、中学1年生から3年生になるにつれて、たんぱく質の摂取量(p=0.048)とビタミンB12(p=0.026)の摂取量が有意に増加していたのに対し、女子中学生においては、栄養素摂取量の変化は見られなかった。また、牛乳摂取量の変化は、男女ともに見られなかった。また、牛乳摂取への態度の変化も見られなかった。
 日本人中学生において牛乳の摂取量は、給食の牛乳摂取が寄与している可能性もあるため、中学生の時から、給食の実施が終わる高校生以降までのさらなる縦断的検討を行う必要があると考えられる。
(2)家庭での牛乳の手に入れやすさが栄養素摂取量の適正さに与える影響
 対象者は、男子中学生181名、女子中学生187名である。2018年5月に、過去1ヶ月間の食習慣を尋ねることができる簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ15y)およびライフスタイルに関する調査票を用いて、調査を実施した。牛乳が毎日冷蔵庫にある者(Every-day群)とそれ以外の者(Others群)の2群に分け、栄養素および牛乳摂取量、さらに栄養素摂取量の適正さの違いを評価した。各栄養素の適正さは、EARが設定されている14栄養素はカットポイント法によりEARを下回る場合を不適切、DGが設定されている5栄養素はDGの範囲外である場合を不適切とした。総合的な栄養素の適正は、EARおよびDGそれぞれにおいて、食事摂取基準を満たさない栄養素の合計値を用いて評価した。
 男子中学生では、習慣的な栄養素摂取量において、Every-day群がカルシウムおよび脂質の摂取量が多く、銅の摂取量が少なかった(それぞれ、p=0.004、0.037、0.007)。栄養素摂取量の適正さで違いがみられた栄養素は、カルシウムのみであり、Every-day群の方が、基準値を満たさない者が有意に少なかった(p=0.001)。また、牛乳摂取量は、Every-day群がOthers群より、有意に多く摂取していた(p=0.001)。
 一方、女子中学生においては、習慣的な栄養素摂取量に関して、脂質の摂取量はEvery-day群の方が有意に多く、ナイアシンおよび食塩相当量の摂取量は、Every-day群の方が有意に少なかった(それぞれ、p=0.010、0.015、0.020)。栄養素摂取量の適正さに関しては、脂質、ビタミンA、ビタミンB2、カルシウムで違いがみられ、ビタミンA、ビタミンB2、カルシウムにおいては、Every-day群の方が基準値を満たしていない者が有意に少なかった一方で、脂質ではEvery-day群の方が基準値を満たしていない者が有意に多かった(それぞれ、p=0.031、<0.001、0.049、0.013)。牛乳の摂取量に関しては、Every-day群の方が、有意に摂取量が多かった(p=0.014)。
 日本人中学生において、家庭で、毎日牛乳が冷蔵庫に入れられていることは、牛乳の摂取量およびカルシウムの摂取量、さらには、カルシウムの摂取量の適正さを満たす者が多いことにつながる可能性が高いことが示された。

研究分野 栄養疫学
キーワード:
牛乳日本人中学生栄養素摂取状況縦断的検討

2020年6月24日