2021年
著者:田中智美
所属:城西国際大学経営情報学部

  • 食育・教育
  • 成人

研究成果の概要

本研究は、研究課題(1)として大型スポーツ選手の身体的特徴、血液性状、エネルギーおよび各栄養素摂取量、食品群別摂取量の実態調査し、研究課題(2)では、大型スポーツ選手を対象にオンライン栄養教育による介入効果の検証をすることを目的に実施した。

研究課題(1)の対象者は、体育系大学運動部に所属する増量を要する競技種目である大型スポーツ選手男女43名(ラグビー選手:男子4名、女子26名、陸上投擲選手:男子3名、女子10名)のうち、データが揃った36名(男子6名、女子30名)を対象とした。評価項目は、身長、体重、Body Mass Index (BMI)、腹囲および血液性状であった。血液検査は、採血を早朝空腹時に微手指採血法により実施し、14項目を評価した。エネルギーおよび各栄養素摂取量、食品群別摂取量は、食物摂取頻度調査法により評価した。
その結果、年齢以外の身体組成の項目において男子選手の方が女子選手よりも体格が大きかった(それぞれp < 0.01)。男子選手は6名のうち5名、女子選手は30名のうち12名がBMI 25.0 kg/m2以上であり、全体の47%を占めていた。血液性状では、脂質異常症の診断基準であるTG 150 mg/dl以上の者は3名であった。エネルギーおよび各栄養素摂取量では、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物において絶対量が女子選手よりも男子選手の方が有意に高値を示したが、体重1 kg当たりの値およびエネルギー比率において男女差は認められなかった。カルシウムの絶対量と1000 kcal当たりの数値は、両群間に有意差は認められなかった。食品群別摂取量では、乳類に男女差は認められなかった。

研究課題(2)の対象者は、研究課題(1)の対象者43名のうち、陸上投擲選手男女11名(男子3名、女子8名)に対して、オンライン栄養教育群5名(女子5名)とコントロール群6名(男子3名、女子3名)に群分けを行った。オンラインによる栄養教育は、月に1回の頻度で合計3回、1回あたり30~60分のZoomを用いて行った。介入効果の評価は、研究課題(1)同様に身体組成の測定、採血、食事調査およびアンケートを、介入前、介入直後の他に、介入効果の持続性を判断するために介入3カ月後の3回実施した。食事バランスは、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物を揃えた割合を評価し、牛乳・乳製品の摂取頻度は、食物摂取頻度調査票の牛乳および乳製品に関する質問項目を用いた。オンライン栄養教育および食意識に関するアンケートを実施した。
その結果、オンライン栄養教育介入による身体組成への変化は認められなかった。食事のバランスでは、コントロール群は時間経過に伴い副菜②の揃える割合が有意に減少し、乳製品は減少傾向であることが示された。一方で、オンライン栄養教育群は、すべての項目で介入直後においても有意な減少は認められず、介入後3か月が経過してもさらなる減少は認められなかった。牛乳・乳製品の摂取頻度の変化では、乳製品の摂取頻度において交互作用は認められなかったが、コントロール群よりもオンライン栄養教育群の方が高い頻度で食べていた。オンライン栄養教育および食意識に関するアンケートでは、対象者全員が介入により食事内容を意識し、食事内容も変わったと感じており、介入後3か月においても継続していた。

本研究で実施した大型スポーツ選手のためのオンライン栄養教育は、ある一定の教育効果があったことが示唆された。今後は、大型スポーツ選手のパフォーマンス向上と健康づくりに貢献できる栄養教育を充実させるために、さらに検証を重ねた上で大型スポーツ選手の健康的に増量させるための栄養教育プログラムを開発する必要がある。

研究分野:栄養教育スポーツ栄養
キーワード:
オンライン栄養教育大型スポーツ選手ウィズコロナ対応

2024年2月29日