2021年
著者:成瀬祐子
所属:松本大学人間健康学部

  • 食育・教育
  • 学童

研究成果の概要

学校給食の提供とその教材化による食育の効果は、給食を食べる児童だけではなく、保護者等も含めた家族の健康的な食生活の構築にも寄与していると推測されるが、その効果は明らかにされていない。そこで、本研究では、特に小学校入学以降に給食として毎日提供されることになる牛乳に着目しつつ、小学校入学時から6か月間にわたって児童およびその保護者の食意識の変化を調査し、学校給食提供に伴う家庭への教育的価値について評価することを目的に分析を行った。
長野県松本市の西部学校給食センターが配食する小学校11校に2021年度4月に入学した822名の児童の保護者を対象に、4、6、7、10月の4回の質問票調査を実施し、4回の調査票が揃い、さらに4回の回答者が一致した296家庭(有効回答率36.0%)を分析対象とした。
家庭で学校給食に関することを話す子どもは6月に223人(分析対象の76.4%、以下同様)、給食開始から半年たった10月でも207人(69.9%)と、小学1年生にとって、学校給食が高い関心事であることが窺えた。また、入学前の給食喫食経験の有無や、食への関心の程度によって差はあるものの、学校給食が児童の食への関心や態度に影響を及ぼし、少なくとも開始から半年たった10月でもその影響が持続されていることが明らかになった。
さらに、子どもが学校給食を食べるようになったことにより、6月時点で131(45.3%)の家族の食への関心が強くなり、155(53.8%)の家族の食に関する話題が増えていたことから、学校給食が子どもの家族にも影響を及ぼすことが明らかになった。10月には、食への関心が強くなった家族は172(58.3%)とさらに増え、食に関する話題は増えた状態が維持されていた。子どもが自ら食事や食べ物のことを話す家庭の方が食への関心や食の話題が増加しており、子どもが学校給食や食に関することを話題にすることで、より家庭に影響を与えやすくなると考えられた。一方、4月から10月にかけて栄養バランスやカルシウム摂取を意識する保護者は増えたが、給食との関連は明らかではなかった。また、牛乳・乳製品に着目すると、それらの摂取頻度や摂取意欲に変化は見られなかった。今後は、子どもが家庭で給食や食のことをより話題にしていくようなスキームの構築とともに、行動変容をもたらす要因やそれに対応させた方策を模索していきたい。

研究分野:食と教育
キーワード:
学校給食 食意識の変化児童保護者牛乳

2024年3月15日