酪農教育ファームにおける食育の展開と今後の課題 -日仏の比較-
2013年
著者:植木美希
所属:日本獣医生命科学大学
はじめに
近年、欧州では、生産主体の農業経営以外に、農業や農村の持つ多面的機能を活用した農家の経済活動が重要視され、かつ市民からも注目されている。特にフランスはEU第1の農業国であると同時に教育ファームのプログラムに対する公的機関の支援が現在最も充実している。教育ファームとは一般市民、とりわけ児童生徒を、学校活動や学外活動で定期的に受け入れ、教育ファーム活動の発展を目指す牧場や農場等を指す。フランスの学校教育では、農業さらには自然や環境問題に親しませるために、農場を訪れる授業が行われている。このような授業を行うことができる農場(ファーム)が「教育ファーム」である。なかでも乳を生産する酪農を営む酪農教育ファームがその中心である。欧州ではもともと家畜の生産が農業において重要な位置を占め、チーズ、バターやヨーグルトの原料となる乳を生産する乳牛は、その種類も豊富に存在する。そのためこの乳牛のいる教育ファームは、子どもたちが「食と命を学ぶことのできる」生きた教育の現場として重要な役割を担っており、現在1,800件を超えている。また訪問者の費用はかなりの部分は公的負担である。2004年にもフランスの教育ファームの調査を実施したが、その調査時には、子ども向けの公的に開発された多彩なプログラムの存在を確認することが出来た。また、フランスでは動物福祉に配慮するとともに、家畜の在来種の保存や伝統的な酪農、あるべき食生活の姿を子どもたちに教育しようとする食農教育意識が顕著であるなどが明確となった。動物福祉とは動物(家畜)の健康と幸福に配慮することである。そこで、本研究では、その後のフランスの教育ファームの進展を調査した。また可能な項目においては今回の調査と前回の調査と比較分析を行った。
一方、日本においては、1998年の酪農教育ファーム推進委員会設立以降、認証牧場は300牧場を超え、2009年度は88万人が訪問している実績があるが、フランスに比較すると、歴史的経験年数が短く、プログラムの内容も牧場によって大きく異なっている。また、首都東京都においても教育ファームが8牧場存在する。この都内の教育ファームの存在意義は極めて大きいと考えられる。そこで日本の教育ファームの東京都内の酪農教育ファーム全8戸を調査し、日仏の比較分析を行うことで、今後の日本の「乳」を活用している酪農教育ファームをより子どもたちへの教育効果の高い形態へと発展させるための具体的方策を検討することとする。
書籍ページURL
https://j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lbx7.html
一方、日本においては、1998年の酪農教育ファーム推進委員会設立以降、認証牧場は300牧場を超え、2009年度は88万人が訪問している実績があるが、フランスに比較すると、歴史的経験年数が短く、プログラムの内容も牧場によって大きく異なっている。また、首都東京都においても教育ファームが8牧場存在する。この都内の教育ファームの存在意義は極めて大きいと考えられる。そこで日本の教育ファームの東京都内の酪農教育ファーム全8戸を調査し、日仏の比較分析を行うことで、今後の日本の「乳」を活用している酪農教育ファームをより子どもたちへの教育効果の高い形態へと発展させるための具体的方策を検討することとする。
書籍ページURL
https://j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lbx7.html