乳の社会文化ネットワーク会員の清水池 義治准教授(北海道大学大学院 農学研究院 基盤研究部門 農業経済学分野)の論文「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の酪農乳業への影響と需給調整システム」が、2022年6月18~19日に開催された2022年度日本フードシステム学会大会において、学会賞学会誌賞を受賞されました。

本論文は、牛乳・乳製品をめぐる制度や経済的・社会的情勢が正確かつ詳細に整理され、その上で、新型コロナウイルス感染症危機がもたらした酪農乳業への影響とその危機対応の分析を通じて、酪農乳業の需給調整システムの問題点を明らかにした点が高く評価されました。



【誌名】
フードシステム研究 2021 Dec; 28(3):172–185

【論文名】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の酪農乳業への影響と需給調整システム

【著者】 清水池 義治 [北海道大学]

【DOI】 https://doi.org/10.5874/jfsr.21_00041

【抄録】
 日本の酪農乳業は、価格調整というより数量調整を基本とする特徴的な需給調整システムを有し、新型コロナ危機による大きな需給変動へ対応してきた。本論文の課題は、新型コロナ危機が酪農乳業に及ぼしている影響とその危機対応の分析を通じて、酪農乳業の需給調整システムが孕む問題を明らかにすることである。
 新型コロナ危機に対応した需給調整は、生乳廃棄や大幅な価格低下を現時点では抑制している。しかし、夏季における牛乳供給制限、乳製品生産の不安定化による需給調整能力の低下、需給調整コスト負担の不均衡といったシステミック・リスクが顕在化した。需給調整の便益を享受する主体は幅広い一方、その費用は一部主体に集中している。乳製品在庫の削減コストを分かち合う方法は、政府を含めた主体間の交渉を通じて決定されるため、一定の時間がかかるものの、コストが主体間で可視化されるメリットもあるかもしれない。新型コロナは、需給調整システムに従来から孕まれていた問題を増幅させる形態の危機をもたらした。需給調整コストを主体間で共有するのが難しいのであれば、政府が需給調整コストを補填する常設の制度が必要である。


【参考】2022年度 日本フードシステム学会大会 https://sites.google.com/fsraj.org/2022

2022年6月28日