2019年
著者:今中 美栄
所属:島根県立大学 看護栄養学部健康栄養学科

  • 食育・教育
  • 中学・高校生

研究成果の概要

 韓国と日本における健康意識や牛乳・乳製品の価値観および健康情報に対する行動(ヘルスリテラシー)について調査し、成長期におけるヘルスリテラシー醸成教育の課題を比較検討することを目的とする。韓国大邱市、日本京都府京都市、宇治市、島根県出雲市の各地域において、小学5年生、中学2年生、大学2年生を対象に健康意識と牛乳・乳製品の価値観に関する調査、および健康情報に対する行動(ヘルスリテラシー)に関する調査(HLS-14)、食習慣調査(BDHQ)を実施した。また、食育担当者である栄養教諭を対象に、食育の目的と情報発信についての調査を実施した。結果、対象者728名、うち韓国114名(小学5年生40名、中学2年生34名、大学生40名)、日本614名(小学5年生182名、中学2年生248名、大学生184名)、栄養教諭は、対象者34名、うち韓国20名、日本14名から回答を得た。児童生徒らの健康意識については、毎日が楽しい(P=0.03)、朝ごはんがおいしい(P<.0001)、給食はおいしい(P<.0001)等、11項目中3項目で日本の方が肯定的な回答であった。また、牛乳・乳製品の価値観に関する設問では、牛乳は骨をつくると思うか(P<.0001)では日本の方が、女の子は牛乳を飲んだ方がよいと思う(P=0.007)では韓国の方が、それぞれ肯定する回答の率は高く、認識の異なる項目がみられた。健康情報に対する行動(ヘルスリテラシー)の比較では、給食だよりなどの情報資料の読みやすさについて、読めない字がある(P<.0001)、字が小さい(P<.0001)、わかりにくい(P<.0001)等、6項目中6項目で日本の方が理解しにくいとの回答が多くみられた。また、健康情報に対する行動(ヘルスリテラシー)に関する行動では、自ら情報収集する(P=0.003)、選択する(P=0.0003)、決定する(P<.0001)など、13項目中9項目で韓国の方が積極的な回答であった。健康情報に対する行動(ヘルスリテラシー)と牛乳・乳製品の価値観との関連については、韓国より日本の方 が関連する項目が多くみられた。このことより、韓国に比較し日本は、全体的にヘルスリテラシーは低い現状にあるが、今後の教育効果が期待されることが示唆された。
 韓国と日本の食物摂取頻度調査の比較では、牛乳はともに「週1回」程度の摂取頻度であった。しかし、低脂肪牛乳の摂取頻度(P=0.02)および摂取量(P<.0001)は、日本より韓国の方が高い結果となった。その他、乳酸菌飲料(P=0.003)、水(P<.0001)、サプリメント(P<.0001)、遊び/運動クラブの参加頻度(P=0.02)では、韓国の頻度が高く、日本では、鶏肉(P=0.01)、たまご(P=0.0002)、野菜(P<.0001)、洋菓子(P=0.002)、フライドポテト(P=0.04)などが韓国より高い頻度であった。また、栄養教諭の健康意識や食育の目的、牛乳・乳製品の価値観について、ほとんど差は認めらなかった。一方、児童生徒等における成長期の牛乳の大切さや必要性などの牛乳・乳製品の価値観や牛乳の摂取状況は、学年が上がるにつれ、低下していた。このことからも、韓国、日本ともに牛乳・乳製品の摂取推進およびカルシウム不足の解消に向けての食教育の必要性が確認された。また、韓国の成長期の子どもたちの健康意識や健康情報に対する行動2(ヘルスリテラシー)は、日本に比べ、積極的であり、今後、日本のヘルスリテラシー醸成教育において、更に充実した共同研究の重要性が示唆された。

研究分野 予防医療学、栄養教育学、公衆栄養学分野
※2019年度「食と教育」学術研究
キーワード:
日韓比較成長期健康意識牛乳・乳製品の価値観

2021年1月22日