2014年
著者:中澤弥子
所属:長野県短期大学生活科学科教授
雑誌名・年・巻号頁:(一社)日本家政学会食文化研究部会編『会誌 食文化研究』2014年11月, 第10号, 1−12.

  • 社会文化
  • 食文化

<要約>

本論は、小学生の保護者及び学校給食の経験者である短期大学生を対象に、学校給食と牛乳利用の摂取状況・意識の実態調査を行い、食育及び食文化の視点からそれぞれの現状・課題を明らかにすることを目指した論考である。また本研究は、平成24年度「乳の社会文化」学術研究助成の研究成果でもある。 本論の序において、著者は学校給食の歴史的展開をふまえ、摂取基準を満たした栄養ある学校給食普及の発展を評価しながらも、「食育基本法」「学校給食法」に掲げられている「豊かな食文化の継承及び発展」を目指す理念の実現には地域差があると懸念を示している。また牛乳が、学校給食の和食メニューにあわないと指摘する意見が出始めている状況をかんがみ、学校給食における牛乳の位置づけについて、食文化研究の観点から議論されることの必要性を、本研究の主目的にすえている。 著者が実施したアンケートでは、調査対象の小学生の6割強が「牛乳好き」であり、9割の生徒が牛乳を残さず飲んでいる結果が判明している。また米飯給食時も、約8割が抵抗なく牛乳を飲んでいる結果が出ている。さらに自由記述の結果では、米飯給食と牛乳の組み合わせに抵抗を感じない小学生も多く、「米飯給食時でも味の取り合わせを意識することなく牛乳を飲んでいる児童生徒が多いことが推察される」と指摘する。また「栄養バランスや経済や変化のある献立」が重視されるばかりで、「料理形式をはじめ食事マナーなど食文化を学校給食の中で教育する視点が軽視されてきたことが考えられる」とも強調している。 いっぽう家での牛乳・乳製品の利用状況について、短期大学生に課したアンケートでは、牛乳の栄養学的特徴を理解しているにもかかわらず、毎日家で200cc以上の牛乳を摂取している学生は約2割にとどまるという。また学校給食の改善点に「地産地消を進め、郷土料理や行事食の体験を増やし、給食時間を長くして欲しい」という希望が多いとの結果を受け、こうした意識を反映した「食育・食文化の視点を重視した学校給食制度の改善・拡充を強く望む」と結んでいる。また学校給食の牛乳については、「体育の時間の後」などスポーツの後の牛乳摂取が、体温調節や筋肉の回復に役立つと実証する研究報告にもふれ、牛乳摂取の時間の見直しの必要も提起し、牛乳をつかった和風料理の利用検討を促している。

<コメント>

 2013年12月、「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録され、その保護継承が叫ばれ始めている。本論は、和食の定義やあり方を伝える措置として期待される学校給食における牛乳イメージを、世代別に明らかにした興味深い研究といえよう。こうした研究の蓄積の上に、牛乳を活かした学校給食の改善が進むことを望む。

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2015年9月21日