2014年
著者:清水池義治
所属:名寄市立大学保健福祉学部・講師
雑誌名・年・巻号頁:農業市場研究、22(4)、2014年3月、34−46

  • 社会文化
  • 酪農経済・経営

<要約>

課題:北海道を対象として、生乳の需給逼迫を受けて酪農協の行う乳業メーカーへの原料乳分配方法が変化した諸要因を明らかにし、直接的な数量調整に依存した需給調整の問題点を示す。1990年代以降の需給動向の特徴を述べた後、近年におけるバター在庫不足の要因を生乳生産と原料乳分配方法の面から指摘する。続いて、生乳生産減少を受けて実施された原料乳分配方法の変更が乳業メーカーへの原料乳分配をいかに変化させたかを明らかにする。
結論:近年、日本の乳製品市場は断続的な国産生乳の供給不足の発生という未曾有の状況に直面している。生乳生産量の減少による乳製品在庫の不足は、北海道での原料乳分配方法によって増幅されるとともに、輸入代替品への需要シフトを通じた販売機会の損失によって国産乳製品市場の縮小を招いてしまっている。北海道における原料乳分配方法は、飲用乳向け・生クリーム等向けといった「優先用途」が優先的かつ必要量分配され、その残余分が「持分比率」により加工原料乳(バター・脱脂粉乳向け)として分配されるというものである(「持分比率」分配方法)。ホクレンと乳業メーカーは在庫不足に対処するために、2008年度以降、原料乳分配方法の部分的な修正を実施している。それにより一部の乳業メーカーはチーズ向け・生クリーム等向けの原料乳分配を削減される一方で、特定の乳業メーカーは加工原料乳の分配が上積みされた結果、乳業メーカー間で新たなコンフリクトが発生している。2007年度以前の従来のコンフリクトは少数の乳業メーカーへの乳製品在庫コストの偏りにより生じていたが、新しいコンフリクトでは必要量分配されていた用途の供給制限により、全ての乳業メーカーにとって需要に見合った原料乳調達の余地が以前より小さくなってきている。新しいコンフリクトの発生は、現状の供給不足を改善するための迅速かつ抜本的な対策を困難にしている。北海道の生乳市場における新しいコンフリクトは、2007年以前の需給緩和を前提として構築された市場ルールが、需給動向の変化(需給逼迫)、ならびに「持分比率」分配方法による乳業メーカーの企業行動の多様化を通じて、関係主体に損失を与えてしまっていることを示唆する。 

<コメント>

ここ数年、バターなどの乳製品在庫不足がたびたび発生し、社会的な耳目を集めている。本論文では、その要因として生乳生産量減少だけではなく、需給緩和を前提として策定された生乳取引ルール(具体的には、バター・脱脂粉乳向け原料乳の残余分配)が需給逼迫という新たな事態に対応できていないことを指摘している。現在の需給逼迫に対して、生産面だけではなく、原料乳分配といった流通面でも考慮すべき事項のあることを示した論文である。

書籍ページURL
http://www.j-milk.jp/tool/kenkyu/berohe000000lg1w.html

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2015年9月21日