2013年
著者:平田昌弘、鬼木俊次、加賀爪優ほか
所属:日本酪農科学会
雑誌名・年・巻号頁:日本酪農科学会編『ミルクサイエンス』.2013;62(1):1_10. 平田昌弘、鬼木俊次、加賀爪優ほか

  • 社会文化
  • 食文化

<要約>

本論文は、エチオピア中高地・高地の乳加工体系について分析した調査報告である。緒言にて、筆者らは「エチオピア中高地で牧畜をおこなうアファール牧畜民の乳加工体系」・「エチオピア中高地地域に共有される乳加工体系」の把握、「エチオピア高地の乳加工体系と比較しつつエチオピア中高地地域の乳加工体系の特徴」分析を目的とし、ケニアやスーダンに比べ、調査報告の少ないエチオピアの乳加工体系の実態を検証することを目的として掲げている。調査方法は、エチオピア中高地で牧畜を行うアファール牧畜民を対象とし、エチオピア北東部のアファール州第2地区アッバーラ郡にて滞在型調査に着手(2011年2月/2012年8・9月)し、搾乳技術、乳加工技術、家畜管理技術などに関する観察・インタビューを実施している。また2011年2月には、エチオピア南部中高地のオロミア州ボレナ地区ヤベロ郡・ディレ郡にて、オロミア系ボレナ牧畜民を対象に広域調査を実施、さらにエチオピア高地でも乳加工体系の地域性の比較検討のために調査を行っている。
本論文の結論として、著者らは「エチオピア中高地の乳加工体系は、発酵乳系列群の乳加工技術のみを用い、生乳から乳脂肪としてバターオイルを分画・保存し、乳タンパク質は分画・保温していないことが特徴であった」と説く。またチーズ加工の技術は欠落し、バターは食用ではなく、肌や頭に塗布するために用いられ、バターオイルは食用、バターミルクは飲用に供される傾向にあると指摘している。なおチーズ分画・保存の欠落、バターオイル分画・保存の発達理由については、「(1)ヒツジ・ヤギ・ウシ・ラクダから生乳が一年を通じて供給されており、乳タンパク質を分画・保存しなくとも、常に生乳から乳タンパク質が供給される状況にあり、(2)バターオイルは不可欠な食材として食文化に位置づけられていたため、乳脂肪を分画・保存する技術は発達した」と結んでいる。またエチオピア高地では、「発酵乳系列群の乳加工技術を採用し、生乳からの乳脂肪の分画・保存の最終形態はバターオイルであるが、生乳からの乳タンパク質の分画の最終形態はフレッシュチーズであり、乳タンパク質を長期保存はしていなかった」と指摘。その理由に「チベット高原などの冷涼な地域では、発酵乳系列群からクリーム分離系列群が発達し、生乳からクリームを分離」する先行研究例を引用し、共通する冷涼な気候が、このような特徴に起因するのではないかと分析している。
なお本研究は、平成23年度国際農林水産業研究センター(JIRCAS)理事長インセンティブ経費「エチオピア低地牧畜民の旱魃対処戦略に関する基礎研究」(代表:鬼木俊次)、平成24年度文部省科学研究費補助金(国際学術研究)の「不確実性下における共有資源管理政策と農牧林業の脆弱性に関する国際比較の計量分析」(代表:加賀爪優)、平成24年度よつ葉乳業受託研究「世界の乳文化に関する研究」(代表:平田昌弘)における研究成果に基づいている。

<コメント>

本論文の意義は、まさに緻密な現地調査の結果といえる。著者らも述べているように、今後ケニア、スーダンなど周辺諸国との比較検討を通し、東アフリカ地域の乳文化の独自性を明らかにすることも可能となろう。今後のさらなる展開に期待を寄せたい。

書籍ページURL
http://www.j-milk.jp/tool/kenkyu/berohe000000j5tk.html

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2015年9月21日