2013年
著者:川上浩
所属:共立女子大学大学院

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要旨

牛乳・乳製品の摂取が高齢者の健康に及ぼす影響については、これまで骨粗鬆症や高血圧等の生活習慣病の予防の観点から多くの研究がなされてきた。また、サルコペニア予防を目的としたレジスタンス運動時の筋肉の維持向上において、乳清タンパク質等の摂取が有用であることも報告されている。しかしながら、通常の日常生活における身体活動と、牛乳・乳製品の摂取との関係を中心に解析した研究報告はほとんどみられない。そこで本研究では、健康な高齢者における牛乳の摂取と、日常生活での身体活動量、歩行速度、および体組成等との関連について調べ、牛乳摂取の有用性を明らかにすることを目的とした。
認知症や寝たきり等の症状を有さない65歳以上の高齢者179名(男性88名、女性91名)を対象に、食物摂取頻度調査票を用いて栄養状態および牛乳摂取量を把握した。身体活動については、一軸加速度センサー内蔵の身体活動量計を用いて、歩数、身体活動強度、および身体活動時間を毎日24 時間計測した。歩行速度(平均値・最大値)は、全長11mの水平歩行路上の移動時間から算出した。筋量、脂肪量、および水分量等は、マルチ周波数体組成計MC-190 で全身および部位別に測定した。骨強度は、超音波骨評価装置AOS-100NW で右踵骨を測定した変数から、音響的骨評価値OSIを算出した。
全対象者を低牛乳摂取グループ(200ml未満/日)85 名、および高牛乳摂取グループ(200ml以上/日)94名に分けた。日常生活における身体活動量、歩行速度、筋量、骨強度、および血清アルブミン濃度に統計学的な有意差(p<0.05)がみられ、高牛乳摂取グループで高値を示した。特に、筋量は男性において、骨強度は女性において牛乳摂取量との相関が高かった。また、牛乳摂取量と身体活動の相乗効果を判定するために、多要因ロジスティック回帰分析でサルコペニア発症相対危険度のオッズ比を算出したところ、「低牛乳摂取+低身体活動」グループは、他の3グループ(「高牛乳摂取+高身体活動」「高牛乳摂取+低身体活動」「低牛乳摂取+高身体活動」)に比べ、危険度が有意に高かった。以上の結果から、高齢者における牛乳の摂取は、身体活動や体組成の向上に有用である可能性が示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000jgmy.html

2015年9月18日