2009年
著者:駒井三千夫
所属:東北大学大学院農学研究科栄養学分野

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

近年、我が国におけるアルコール飲料の総消費量は増加の傾向にあり、それを反映してアルコール摂取に起因する健康障害が深刻な社会問題の一つとなってきた。このような疾患の予防・治療のために様々な食品成分が評価されてきているが、牛乳の有効性を示すデータは出ていなかった。今回このため、牛乳中の主要タンパク質であるカゼインのアルコール性肝障害改善効果について検討した。我々は、LieberとDeCarliのエタノール含有液体飼料の脂質含量などに変更を加えることによって、より短期間でアルコール性肝障害を引き起こすことのできる動物実験モデルを確立したので、この系を用いて検討を行った。
これまで、カゼインの微生物酵素分解物(種々の機能性ペプチド)にも同様な効果があると言われてきて、これらカゼイン分解物は牛乳の加工物で既に商品化されているものもある。しかし、その場合は加工食品であり、主として微生物発酵させて生ずる機能性ペプチドの研究と開発商品が多い。こうした加工食品の有用性はすでに良く知られていて、健康の維持に有効に使われつつある。しかし、今回我々はカゼインそのものを摂取するだけでもアルコール性肝障害抑制に有効であるというデータを得た。このことは、日常生活において牛乳そのものを飲む機会を増やすことが健康の維持に重要であることを示唆している。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html
キーワード:
カゼイン(牛乳タンパク質)アルコール性肝障害抗炎症作用ラット

2015年9月18日