2009年
著者:田中喜代次
所属:筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

一定期間の食生活改善により体重を減少できたとしても、偏った食事内容での減量は健康面に悪影響をもたらしかねない。本研究では、牛乳乳製品の摂取状況が減量中の体重減少量や血液検査数値に及ぼす影響を検討した。対象者は、千葉県袖ケ浦市でおこなわれた減量教室に参加した、BMIが25kg/m2以上または腹囲が90cm以上の中年男女50名(男性21名、女性29名)であった。本研究における減量プログラム(食事改善教室)は、14週間、週1回、1回90分の講話+実習形式によるものである。食生活指導では、1日の総摂取エネルギー量の目安を男性1,680kcal、女性1,200kcalとした上で、栄養バランスのよい食事が摂取できるよう導いた。14週間の介入により、教室参加者の体重(男性-6.9±3.2kg/-8.9±4.3%、女性-8.1±2.7 kg/-11.7±3.2%)や腹囲(男性-7.2±3.8cm、女性-8.7±2.6cm)は有意に減少した。減量介入による体重減少や食事摂取量の減少に伴い、男女とも多くの血液検査項目に改善がみとめられた。改善した項目には、中性脂肪や血糖といった健康診査の対象となる検査項目だけではなく、炎症性マーカー(SAA、hsCRP、IL-6、TNF-α)、アディポサイトカイン(IL-6、TNF-α、レプチン、アディポネクチン)、血清脂質プロファイル(large VLDL、remnant VLD、small dense LDL、HDL2など)も含まれた。減量中の牛乳乳製品摂取量が体重減少量や血液検査項目に及ぼす影響を検討するため、10週目の牛乳乳製品摂取量が中央値より“多い”群(男性10名、女性15名)と“少ない”群(男性11名、女性14名)に分けて分析をおこなった。体重と腹囲については、“多い”群の対象者も“少ない”群の対象者と同様、顕著に減少しており、女性では、“多い”群の体重減少量は“少ない”群の体重減少量より大きい傾向さえ窺える。さらに、血圧や血液検査項目の変化についても、両群ともに多くの数値に改善が見られ、その傾向に明らかな群間差はみとめられない。つまり、本研究の結果、減量中に毎日牛乳乳製品を摂取し、摂取量を(適量範囲内で)増加させても、体重や腹囲を顕著に減少させることは可能であることが明らかとなった。また、減量中の牛乳乳製品の摂取が血液検査数値に特別な好影響を及ぼすとは言えないまでも、牛乳乳製品の摂取量を(適量範囲内で)減量中に増加させても、血圧や血液検査数値は顕著に改善することが示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001mnub.html

2015年9月18日