2008年
著者:下村吉治
所属:名古屋大学大学院生命農学研究科 応用分子生命科学専攻栄養生化学研究室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

骨格筋の萎縮は、筋不活動及び老化などによってもたらされ、現代の高齢社会においては、その予防策を検討することは重要である。タンパク質の摂取は、筋タンパク質維持に重要であるが、摂取タンパク質のアミノ酸組成によりその効果が異なる可能性が考えられる。その例として、牛乳タンパク質を構成するカゼインと乳清タンパク質が挙げられる。カゼインと比較し、乳清タンパク質は消化吸収が速いタンパク質であり、そのアミノ酸組成において、タンパク質合成を促進する分岐鎖アミノ酸をカゼインよりも多く含む。そこで、本研究では、ラット後肢懸垂によって起こる骨格筋の萎縮に対する食餌中の乳清タンパク質とカゼインの比率を変えた食餌の影響を比較検討した。5週齢Sprague-Dawley系雄ラットを5日間の予備飼育後、後肢懸垂中の食餌としてAIN-93G中のカゼインを100%、80%、50%、20%乳清タンパク質に置き換えた餌を用いた。6日間の後肢懸垂の後ヒラメ筋を採取した。体重、摂食量、ヒラメ筋重量、筋タンパク質濃度を測定した。後肢懸垂によって各群ラットの体重と摂食量に差は見られなかった。また、ヒラメ筋重量は、6日間の後肢懸垂により、約55%に減少したが、食餌群聞で差はなかった。しかし、筋総タンパク質濃度の減少は、有意ではないが乳清タンパク質を多く含む食餌群(特に80%乳清タンパク質群)で抑制される傾向にあった。これらの結果より、食餌中の乳清タンパク質を増加した牛乳タンパク質は後肢懸垂による筋萎縮時の筋タンパク質減少に対して抑制的に作用する可能性が示唆された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p000001ahym.html
キーワード:
牛乳タンパク質乳清タンパク質カゼイン後肢懸垂

2015年9月18日