2004年
著者:柳田晃良
所属:佐賀大学農学部食品栄養化学教室

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

要約

近年、食生活の欧米化や運動不足などにより、肥満、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、高血圧などの生活習慣病が増加しており、その多くは過食、運動不足などを基盤とした肥満、とくに内臓脂肪の蓄積に起因している事が知られている。現在、日本人の約20%が肥満症であるという報告もあり、その予防として食事中の機能性成分が有効であり、なかでも食事脂肪の量と質の役割が大きいことが認められている。
近年注目を集めている共役リノール酸(Conjugated linoleic acid ; CLA)は鎖中に共役二重結合を持つリノール酸の位置・幾何異性体で、乳製品や肉製品に比較的多く含まれている脂肪酸である。既に抗動脈硬化作用、抗肥満作用および抗ガン作用など報告されているが、その作用機序は十分明らかにされていない。本研究では、脂質代謝の重要な機構であるリポタンパク質代謝への影響や、脂肪組織中における遺伝子の発現プロファイリングを通して、生理作用のメカニズム解明を行なった。
その結果、肥満モデルOLETFラットにおいて、CLAの異性体のうち10trans,12cis型が肥満抑制作用と脂質低下作用の活性本体であることが示された。リポタンパク質代謝においてそのトリグリセリド低下作用は、肝臓からの超低密度リポタンパク質分泌段階からの抑制作用が示唆された。またコレステロール逆転送系に関与する高密度リポタンパク質濃度を上昇させることにより抗動脈硬化作用を示すことが示唆された。脂肪細胞における遺伝子発現プロファイリングにおいては、脂肪細胞特異的に発現する転写産物の同定が急務であることが示された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/8d863s000004dmbk.html
キーワード:
共役リノール酸肥満モデルOLETFラット高脂血症内蔵肥満

2015年9月18日