2003年
著者:山口正弘
所属:順天堂大学・スポーツ医科学研究所

  • 健康科学
  • その他

要約

共役リノール酸(CLA)摂取は生体に色々な魅力的な生理作用を齎すことが報告されている。
我々はCLA摂取したときの体調を調べ、CLAが運動能力を向上する機能を持つかどうか、調べることを目的とし、次のような研究結果を得た。
1) CLA摂取により、血中CLA濃度が高まった。走運動トレーニング負荷によっても、血中CLA濃度は殆んど変化しなかった。
2) 走運動トレーニングを負荷すると、血液ヘモレオロジーは粘性を高めたが、 CLA摂取のラット群では粘牲の高まりは弱く、血液ヘモレオロジー値は低位であった(非CLA摂取群比=70%)。血液はサラサラで、栄養物や酵素の供給は速やかに、疲労物質の除去も速やかにおこなわれる。
3) CLA摂取・走運動トレーニング負荷ラットから分離したラットのひらめ筋(遅筋)や足底筋(速筋)の呼吸作用は、非CLA摂取に比べ、より酸素消費率が大きく、両筋肉とも酸化能力を高めた。筋肉の培養液に乳酸を付加した実験結果から疲労し難い筋肉に発達したことが示された。
4) 走運動卜レーニング負荷ラット群の血中乳酸濃度がCLA摂取により著しく低値を示した。
5) CLA摂取ラットの肝の乳酸脱水素酵素(LDH)が活性化し、運動トレーニング負荷はその活性化がさらに著しく強まった。この来高5裂から、Cori's cyc1eの活性化が起こり、4)の現象を裏付けた。
6) CLA摂取は血中ケトン体濃度を高め、運動トレーニング負荷は更にその作用を強めた。この結果は脂肪酸のβ酸化代謝の活性化が、主に筋肉で生じた事を示唆している。
7) 運動をすると、物理的及び活性酸素による化学的ストレスにより筋細胞膜が損傷を受け、筋細胞から筋肉機能に必須な酵素群が逸脱する。
筋肉に特異的に存在するクレアチンキナーゼ(CK)を指標として、CLA摂取群ラットの血中CK濃度は著しく低下した。CLA摂取下では、走運動トレーニング負荷でも血中CK濃度は高まらなかった。
上述の実験結果は運動を支えるエネルギー面では、血液をサラサラに保ち、筋へのエネルギー源の供給を容易にし、エネルギー生産系の酵素反応の阻害物質(乳酸等)を筋から速やかな除去など、筋肉のパワーの充足を強化する。また、脂肪酸の代謝活性化し、筋運動の持久力を高めることが示唆された。
更に、筋からの筋細胞から筋肉機能に必須な酵素群の逸脱を抑制する機能は運動下で長時間運動能力の減衰を抑制する効果を示し、運動の持久性を高め、または運動トレーニング後の回復の時聞を短縮する効果の可能性が示された。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021cbk.html

2015年9月18日