1999年
著者:下村吉治
所属:名古屋工業大学共通講座健康運動科学

  • 健康科学
  • その他

研究目的

BCAA(BCAA:ロイシン、イソロイシン、バリン)は栄養学的な必須アミノ酸であり、食事中タンパク質に含まれる必須アミノ駿の約50%、筋タンパク質の約35%を占める。このようにBCAAはタンパク質に含まれる量が多いので、動物の運動中にエネルギー源及び糖新生の基質として利用されると考えられている。実際に、運動開始前にBCAAを投与すると、投与したBCAAの酸化分解の促進と共に筋タンパク質の分解が抑制されることがヒトにおいて報告されており、タンパク賀代謝に対するBCAA投与の影響は明らかに認められている。一方、ラットにBCAAを投与して運動させると、運動の持久時間が延長したとする報告があるが、ヒトの持久力に対する影響でも類似の結果が報告されている。これらの研究では、BCAAの単回の投与の影響を検討したもので、BCAAの長期投与や、異なる質のタンパク質の長期的な摂取が運動時の体内のタンパク質・アミノ酸代謝や糖質代謝に及ぼす影響は、国内外でほとんど研究されていない。タンパク質およびアミノ酸は栄養素として摂取するので、薬剤的な効果を検討するよりも、長期的な摂取による影響の検討か必要であろう。
牛乳タンパク質に含まれるBCAA量は21.4%であり、似の動物性タンパク質(豚肉、18.6%;牛肉、16.8%;鶏肉、18.3%)や植物性タンパク質(大豆、18.4%;米、16.3%;小麦粉、15.8%)と比べて含量が高い。上述のように、運動中には多くのBCAAが酸化分解されるので、激しくスポーツを行うヒトにとっては牛乳タンパク質は有利なタンパク質であると考えられる。実際に、以前の申請者らの研究により、ミルクカゼインはBCAA摂取のための有利なタンパタ質であることが示唆された。牛乳について考えれば、激しくスポーツをする人に重要なカルシウムや運動後の水分を補給することもでき、タンパク質、カルシウムおよび水分を同時に主摂取できる利点があるだろう。
このような背景により、本研究では、申請者らの以前の研究の追加研究として、牛乳タンパク質にさらにBCAAを添加することが、運動トレーニングラットのBCAA代謝に対してどのような影響を及ぼすかを検討し、牛乳タンパク質にさらにBCAAを追加する必要があるか否かを調べた。さらに、ラットへの一過性のBCAA投与が運動持久力を高めるとすれば、持久力の決定要素として知られているグリコーゲン代謝に影響する可能性があるので、牛乳タンパク質食およびそのBCAA添加食のグリコーゲン代謝に及ぼす影響を検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日