1999年
著者:大国真彦
所属:元日本大学総合科学研究所日本大学医学部小児科

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はじめに

1997年よりわれわれは、現代中国北京市における幼児の体格と食生活習慣との関連性について北京児童院との合同研究を行ってきた(1)。その結果以下の結論を得た。
(1) 北京市における幼児肥満の出現頻度は、約10年前に報告された成積と1997年に調査した結果を比較すると、推計額的に有意差をもって2倍以上に増化していた。
(2) 生活習慣の環境を異にすると予測された2種類の幼稚園、すなわち現在の北京市における都市型生活が直接反映していると考えられる通園制形式の幼稚園と、これとは対照的に従来から食生活習慣がほぼ守られていると想像された寄宿制の幼稚園を対象として、両幼稚園児における身体状況の比較では、5歳時の年長になると明確に相違が認められるようになった。すなわち、平均値の比較においで身長、体重、肩甲骨と上腕部皮指圧およびBMI,肥満授、また肥満児出現率のいずれにおいても通園制幼稚園児は、推計学的に有意に勝っていた。
(3) 通園制の幼児にはハンバーガーやフライドチキンなどのファーストフードへの嗜好が強く、動物性タンパク質や脂肪の摂取を増加させている可能性が高かった。
(4) 牛乳摂取と比べて、清涼飲料水を毎日飲むと答えた群に有意に肥満児の出現頻度も高い点は、ファーストフードへの嗜好と併せて先進国社会に共通した都市型生活と小児肥満との関係を象徴するものと考えられた。
以上の結果から、われわれは幼児期に於ける体格形成と生活習慣病の代表と目される肥満の予防に関して、牛乳の持つ役割の重量性について検討すべき課題を以下の如く認識し本研究を行った。(1) 都市化の影響を受け始めた北京市通園制幼児における牛乳摂取と栄養摂取調査を詳細に検討し、今乳の成長増進と生活習慣病の予防に関するevidenceを示すこと。
(2) 幼児の生活習慣病にとって清涼飲科水やファーストフードと牛乳とは対極的であるとする仮説を検証すること。
これらの課題に関する研究を通して幼児期早期からのライフスタイルとしての都市化と生活習慣病の関連性について明らかにすることを目的とした。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日