1999年
著者:橋本佳明
所属:東京大学医学部附属病院検査部

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

最近、我々は、植物ステロール血症の2症例を見つけ、現在外来で経過をフォローしている。植物ステロール血症(シトステロール血症とも呼ばれる)とは、1)常染色体劣後遺伝、2)多発性黄色種、3)若年発症の冠動脈疾患を臨床的特徴とする希な疾患である。植物ステロールは構造がコレステロールと非常によく似ているが側鎖の構造が異なる。本疾患は血中にこの植物ステロール(β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールなど)が増殖していることが原因と考えられているが、その病因遺伝子は明らかになっていない。1974年にBhatt acharayyaとConnorにより姉妹例が報告されて以楽、現在までに確認された患者数は約50例、我が国では約10例と推定されている。
この疾患の根本的な治療法はなく植物ステロールの摂取制限が最も大切であると考えられている。植物ステロールは植物に含まれているが、植物を餌にしている動物(牛、山羊など)の乳にも植物ステロールが符在する可能性がある。しかしながら、これに関する論文は我々が検紫した限りにおいてない。牛乳は様々な栄養素を豊富に含み、毎日摂取すべき食品の一つである。従って、植物ステロール患者に牛乳を許可できるかどうかを明らかにすることは重要である。
植物ステロール血症患者の血中植物ステロールの増化は、吸収率の亢進が原因であると考えられている。植物ステロールの小腸での吸収率は健常者では5%以下、植物ステロール血症患者では約25%と報告されている。しかしながら植物ステロールの吸収率は食習慣の違いにより異なるかどうかは検討されていない。
今回、我々は、牛乳合有成分および植物ステロール有無について検討した。また、低カロリー玄米採食療法を約2カ月間入院して行ったリウマチ患者の植物ステロール濃度についても検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021ecz.html

2015年9月18日