1998年
著者:山縣然太郎
所属:山梨医科大学保健学

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

研究目的

これまで骨粗鬆症の疫学研究は多くあり、年齢や閉経のほか栄養や運動などの生活習慣との関連について報告されているがその結果は必ずしも一致していない。ひとつには栄養調査など生活習慣の正確な把握が困難であることに起因しているのかも知れない。一方で、個体の環境要因に対する感受性(個体差・遺伝要因)が存在し、それがバイアスになっていたことも一因と考えられる。また、我々のこれまでの調査によると日本人のカルシウム摂取量を左右するものは牛乳、乳製品であり、カルシウム総摂取量と骨密度は必ずしも正の相関を持たないが、牛乳、乳製品の摂取量と骨密度は正の相関があるとの知見を得ている。これは、カルシウムをどんな食品群で取るのが骨代謝に有効に働くかということを示唆している。そこで、本研究では牛乳、乳製品を含む栄養摂取と運動が骨代謝に及ぼす影響に対する個体差に着目し、遺伝要因と環境要因の相互作用を分子遺伝学的手法を用いて解明することを目的とする。
本対象は地域に住む健康な女性を対象にしており、研究結果はそのまま住民に還元できると同時に骨粗鬆症の予防の立場から対象としてもっとも相応しいと思われる。本研究は生活習慣と骨密度の関連に存在すると思われる個々の反応性の違いの概念を解析するものであり遺伝要因と環境要因を独立でなくその相互作用の点からの分析は独創的である。また、本研究は遺伝要因の解明に家族歴や双生児研究等の手法を用いるのでなく、遺伝子多型に基づく分子遺伝学的方法を用いる。本研究で骨密度と生活習慣(とくに栄養、運動)に対する遺伝子の影響が明らかになることにより、個人差を前提とし、それをカバーするための骨粗鬆症予防の生活指導方法の道が開かれるにとどまらず、新たな治療法の開発も期待される。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021epa.html 

2015年9月18日