1995年
著者:藤田敏郎
所属:東京大学医学部第四内科

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

目的

多くの疫学的研究においてカルシウム(Ca) 摂取量と血圧との聞には負の相関があることが示され、Caの降圧作用が古くから注目きれてきた。しかし、臨床的にCa投与を行った研究では必ずしも降庄効果が示されていない場合もある。動物実験の結果を見ると、CaはDahl食塩感受性ラット・幼若高血庄自然発症ラット(SHR)・DOCA食塩ラット・アンジオテンシン2食塩ラットなどの食塩感受性高血庄モデルで著明な降圧作用を示すことが報告されている。すなわち、Caの降圧効果は食塩による高血圧に特異的で、食塩非感受性高血圧では降圧効果が弱いために臨床実験においては矛盾した成績を生じているものと考えられる。
ところで、責任研究者は、食塩負荷により血圧上昇をきたしやすい食塩感受性高血圧の原因が腎臓におけるナトリウム(Na)排泄機能低下であり、更にこの腎Na排泄傷害は腎の器質的変化によるものではなく、腎交感神経系の亢進が関係していることを報告してきた。また、食塩感受性高血圧モデルのDOCA-食塩高血圧ラットや幼若SHRにおいて、食塩負荷により視床下部と腎臓のnorepinephrine turnoverが亢進することから、中枢・腎交感神経系の異常を指摘してきた。更に最近、腎交感神経活動(RSNA)を直接に測定することにより、動脈受容器反射の中枢特性を検討し、食塩を負荷したSHRにおいてRSNAの亢進と中枢特性の滅弱を証明した。その結果、食塩負荷による腎交感神経系の亢進は中枢の異常に基づくものと考えられた。
責任研究者はCaの降圧効果は食塩高血圧に特異的であるのみでなく、食塩高血圧の発症維持に重要と考えられている交感神経機能亢進の正常化をも伴っていることを、アンジオテンシン2-食塩高血圧ラットを用い、血漿catecholamine上昇の抑制に基づき示した。SHIにおいて経口Ca投与はNa利尿を来たすことやDOCA-食塩高血圧ラットにおいてCa負荷を行なうと腎血流量が増加することが報告されているので、Caはとくに腎交感神経系に影響する可能性が推測される。そこで、この点について検討する目的で、食塩感受性動物である幼若SHRを対象として食塩ならびにCaの負荷を行ない、RSNAの変化を調べた。また、食塩は動脈庄受容器反射の中枢特性にも影響することが分かつているので、Caの中枢特性に対する影響についても検討を行なった。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022ll2.html

2015年9月18日