1990年
著者:小町喜男
所属:大阪府立公衆衛生研究所

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

はじめに

過去2年間にわたって、牛乳摂取と循環器疾患の関連を、農村、漁村、都市の9集団の男女、延べ約3万人(40-50歳)を対象として、10年間の追跡調査の成績をもとに検討した。
そして、大要以下の結論を得た。
1)最近の10年間において、各集団とも牛乳・乳製品の摂取量が増加しつつあることを認めたが、その摂取量は現在でも欧米諸国に比しはるかに少ない。
2)我国程度の牛乳・乳製品の摂取は、血清総コレステロール値の過度の上昇をもたらし、動脈硬化症を促進する可能性は低い。但し、都市の一部集団に関しては、牛乳・乳製品の摂取を制限する必要はないものの、肉類等の他食品の摂取量を勘案しながら、牛乳摂取を勧める必要がある。
3)牛乳・乳製品の摂取とカルシウム摂取、高血圧との関連についてみると、近年の牛乳・乳製品を中心とするカルシウム摂取量の増加傾向とともに、従来は認め難かった血圧値とカルシウム摂取量の負の相関関係が、男子では有意に、女子ではその傾向が認められるようになってきた。以上より、高血圧、動脈硬化症予防の観点よりみて、我国ではカルシウムの摂取増加が必要であり、とくに農村では、牛乳・乳製品よりの摂取を増加させることが望ましいと結論した。
しかし、牛乳以外に、魚介類、野菜類、豆類からのカルシウムの摂取割合の多い我国では、カルシウム摂取の増加は、かえってこれらの食品の摂取増加に伴う食塩摂取量の増加をもたらしかねないと危惧する意見もみられる。そこで、本年度はカルシウム摂取源食品を、主として牛乳・乳製品による場合、それ以外による場合に分けて、食塩摂取量との関連を検討しカルシウム摂取量を多く、食塩摂取量を少なくする高血圧予防のための望ましい食生活のあり方を具体的に示す研究を行った。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021u7u.html

2015年9月18日