1988年
著者:松本明世
所属:国立栄養研究所病態栄養部

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

研究目的

心筋梗塞や脳卒中の主因は動脈硬化症であり、日常の食事と密接な関連のある病態である。食事由来の多価不飽和脂肪酸が血清脂質レベルを低下させる作用を持ち、高脂血症の治療・予防に役立つことが知られている。一方、パルミチン酸など飽和脂肪酸は血中のコレステロール値を上昇させるとされている。しかし、これら脂肪酸個々の脂質代謝に対する作用機構については明かにされていない。
我々はこれまでに、リポ蛋白代謝に対する食事性多価不飽和脂肪酸の効果について、ラットを用いて、動物脂・横物油・魚油により飼育し、アポリポ蛋白遺伝子のmRNA発現量の差異を解析し、魚油がアポA1およびアポBの発現量を抑制することを見いだし報告した。
本研究では、各種脂肪酸のリポ蛋白代謝に対する作用について、アポリポ蛋白遺伝子の転写制御にあたえる効果をメッセンジャーRNA(mRNA)レベルで解析することにより、作用メカニズムを明かにすることを目的とした。
これまで、リポ蛋白代謝に与える脂肪酸の作用を調べる研究は、人聞を対象とする場合を含め、動物固体に食餌から食品あるいは精製油として脂肪酸を与えたため、得られた結果には動物の固体差・体内における代謝系の影響あるいは投与した脂肪酸が混合物であることなどの影響が加わり、解釈が複雑であった。しかし本研究では、肝癌由来の倍養細胞(HepG2)系を用いることにより、一定の条件下、代謝系を単純化したもので実験を行い、純化された単一の脂肪酸のリポ蛋白代謝に与える作用を解析した。さらに、アポリポ蛋白遺伝子の転写にあたえる制御作用について、クローン化されたcDNAをプローブに用い、ノーザンプロット法によりmRNAの発現レベルで解析することにより,転写調節に与える各種脂肪酸の作用および作用メカニズムを検討した。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000021rwd.html

2015年9月18日