2018年
著者:宮崎 亮
所属:島根大学 人間科学部

  • 健康科学
  • 各ライフステージ

【緒言】

 我が国では高齢化に伴い、要介護の主要因となる虚弱(フレイル)が増えており、その対策が急務である。フレイルは健常な状態と機能障害との間の移行状態であり、その有症率は65歳以上の約10人に1人、予備軍は約3人に1人と言われている。
 先行研究では、牛乳乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)摂取量摂取が多いと総死亡率や心血管イベント発生が少ないことが報告されている2)。言うまでもなく、牛乳乳製品を含むタンパク質摂取量が多い者は筋量が多い。さらに、運動量・牛乳消費量が多い高齢者は、それぞれ単独と比べフレイルのリスクが低いとの報告もあり3), 4)、このことは運動・乳製品摂取の両者の定量的・詳細な検討の必要性を示唆する。ところが我々が知る限り、先行研究におけるパフォーマンス評価は握力や下肢筋力などが主であり、日常生活動作に最も寄与するはずの歩行能力は報告がない。
 隠岐の島は日本海に浮かぶ離島であり、高齢化率が約40%にも達する。かつ離島のため人の移動が少なく、研究フィールドとして適しており、我々は2010年より疫学調査を進めてきた5), 6)。さらに特徴的なのは、漁業の島であることである。乳製品摂取量も少ないことが考えられ、乳製品摂取効果が大きいと思われる。
 そこで我々は、島根県隠岐の島町におけるフレイル予防に資する牛乳乳製品および歩行能力に着目した。歩行能力(歩行速度や歩幅など)を詳細に調査した。同時に、食事調査(牛乳・乳製品を含む)、血液マーカー、および生活習慣の質問紙調査をもとに、フレイル予防に資する歩行能力および牛乳・乳製品摂取量の効果を検証した。本研究の結果は、将来的な運動・栄養の包括的な介入に向け有用なデータとなる。したがって本研究の目的は、我々の保有する高齢者コホートを用い、牛乳・乳製品摂取および歩行能力(歩行速度、バランス能力)などを詳細に測定し、上記フレイルとの関係性を網羅的に調査することであった。
 ※平成28年度「牛乳乳製品健康科学」学術研究

「あたらしいミルクの研究リポート」のご紹介

この研究をもとに、「あたらしいミルクの研究リポート」を作成しました。
研究リポート紹介ページ (Jミルクのサイトへ)

2020年6月24日