2017年
著者:池本 真二
所属:聖徳大学 人間栄養学部 人間栄養学科

  • 食育・教育
  • 中学・高校生

研究成果の概要

 思春期の食事は成人期へとつながることが報告されているため重要であると考えられるが、日本人中学生の栄養素摂取量の適正さおよび牛乳摂取量に影響する要因に関する検討はほとんどない。そこで、本研究では、子どもの食事に影響する要因の1つであると考えられる母親および父親の栄養知識が中学生の栄養素摂取量の適正さおよび牛乳摂取量に影響するかを検討することとした。
 対象者は、母親と中学生のペアが288組、父親と中学生のペアが202組である。母親および父親の栄養知識は、日本人成人の栄養知識を評価する調査票(JGNKQ)を用いて評価し、母親および父親それぞれの栄養知識の総合点数により2群に分類した。中学生の過去1ヶ月間の食習慣は、日本人の学童期および思春期の子どもを対象とした簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ15y)を用いて評価した。各栄養素の適正さは、EARが設定されている14栄養素はカットポイント法によりEARを下回る場合を不適切、DGが設定されている5栄養素はDGの範囲に収まらない場合を不適切とした。総合的な栄養素の適性は、EARおよびDGそれぞれにおいて、食事摂取基準を満たさない栄養素の合計値を用いて評価した。また、牛乳は、普通牛乳と低脂肪牛乳を合わせた摂取量とすることとした。
 母親の栄養知識により分類した中学生の栄養素摂取量の適正さにおいて、男子中学生のビタミンB6、女子中学生のビタミンB1において、母親の栄養知識が高いHigh群の方が、母親の栄養知識が低いLow群より不適切な摂取をしている者の割合が有意に低かった(それぞれ、p=0.018、p=0.010)。また、女子中学生において、銅の摂取量は、High群の方がLow群より多く(p=0.046)、脂質の摂取量は、Low群の方がHigh群より摂取量が多かった(p=0.041)。総合的な栄養素摂取量の適正さおよび牛乳の摂取量に差は見られなかった。
 父親の栄養知識により分類した中学生の栄養素摂取量の適正さにおいて、男子において、ナイアシンのみ、父親の栄養知識が低いLow群の方が、父親の栄養知識の高いHigh群より、不適切な摂取量をしている者の割合が少なかった(p=0.018)が、女子においては、全ての栄養素において差が見られなかった。また、総合的な栄養素摂取量の適正さおよび牛乳摂取量は、男女ともに2群間で差が見られなかった。
 本研究では、母親および父親の栄養知識は日本人中学生の習慣的な栄養素摂取量および牛乳摂取量と関連がないことを示した。社会的関係が変化する時期である中学生の食事に影響する要因のさらなる検討が必要である。

研究分野:栄養疫学
キーワード:
牛乳栄養知識日本人中学生栄養素摂取状況

2020年1月16日