1990年
著者:豊島区立教育委員会
所属:豊島区立教育委員会
雑誌名・年・巻号頁:豊島区立郷土資料館, 1990年8月, 全88頁.

  • 社会文化
  • 食文化

<要約>

本書は、豊島区立郷土資料館で催された特別展図録(会期 1990.8.16~10.14)である。明治中期から太平洋戦争直後までの間に、延べ60もの牧場(牛乳搾取場)があったとされる豊島区。特に明治から大正期にかけての巣鴨界隈は、東京を代表する「牛乳生産地」でもあった。当展示は、1987年度の特別展『失われた耕地—豊島の農業—』において、牧場のテーマ展示に対する反響の大きさ、特に来館した子供たちの間にみられた関心の高さを受け開催されたもので、東京の牧場史の掘り起こしとその記録化のあり方を再考する機会として企画された。
なお本書は、「Ⅰ 酪農のあけぼの」「Ⅱ 東京牧場の創始者たち」「Ⅲ 牛屋横丁 豊島の牧場」「Ⅳ 東京ベイ・ミルクロード」「Ⅴ 消えゆく東京牧場」「Ⅵ 参考資料」という構成となっており、展示録ならではの多彩な図版が収録されている。嶺岡牧に始まる日本の飲用乳事業の始まりから、やがて外国人指導者の勧告下で導入されていく酪農・牧畜技術の系譜、さらには家庭生活に登場する牛乳イメージの変遷などについて語る風刺画、広告、写真といったビジュアル資料を多数紹介し、日本人と牛乳の関わり合いを紐解いている。展示録という性質ゆえに、図版の収録がメインであるが、乳製品の企画展のあり方について考えさせられる興味深い一冊でもある。

<コメント>

本書は、牛乳と日本人の関係を示してくれるヴィジュアル近代史である。東京界隈の史資料に限られているため、乳製品の近代史としての性質は網羅できているとは言い難いが、郷土資料館ならではの地域史資料の多用は、本書の強みといえよう。今後各地でこうした地域の乳製品関連史資料の掘り起しが盛んになることを期待したい。

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2015年9月21日