2012年
著者:空閑信憲 内閣府
所属:内閣府
雑誌名・年・巻号頁:2012年度日本農業経済学会論文集、2012年12月、186_191

  • 社会文化
  • 酪農経済・経営

<要約>

課題:2007年以降、国内のバター不足が続き、バターの小売価格も2008年4月に実施された大手乳業メーカーによる値上げ以降、高止まりが続いている。このような市場の異常事態には、しばしば、消費者の買い急ぎ、買い占めが発生する。
 本稿では、わが国のバターおよびマーガリンの家計需要について、2000年1月から2012年1月までの月次データにLES(Liner Expenditure System)を適用し、近年の消費者によるバターの「買い急ぎ」について分析する。なお、家庭用の用途がバターと類似しているマーガリンの需要を考慮し、バターとマーガリンの合成費目である食用油脂の効用関数等を用いて推計を行う。
 結論:本稿の分析を通じて、以下の2点が明らかとなった。
 第1に、バター需要の構造変化が示唆されたことである。分析対象期間中のバター需要関数の安定性を構造変化テスト(逐次チャウテスト)で分析したところ、2005年6月において構造変化の発生している可能性が示唆された。
 第2に、2005年11月以降の過度のバター需要超過の状況が確認されたことである。特に、2010年4月以降は、恒常的に過度のバター需要超過が発生している可能性が示された。このことは、同時期がバターの代替品であるマーガリンの価格上昇のピーク時であることも関係していると考えられる。
 バターの価格は、2011年10月からさらに値上げされた。さらに、バターの代替品であるマーガリン価格も原料である大豆、なたね油、コーン油などの国際油脂価格が高騰している。このため、国内のバター需要超過の状況は、今後とも続いていくと思われる。
 本稿に残された課題としては、バターの需要サイドの情報のみを用いてバターの「買い急ぎ」を分析したが、消費者のバターに関する市場感応弾性値を推計するためには、バターの供給サイドの情報も必要である。よって、今後この点を明らかにするためには、本稿の分析対象期間中におけるバター供給の価格弾力性に関する詳細な分析が必要になる。 

<コメント>

 近年、断続的に発生しているバター不足は、結果として国産乳製品市場の縮小均衡をもたらしている。本論文の結論は業界関係者の実感として指摘されてきた内容であるが、その実感が実証分析を通じて科学的な事実として証明されたと言える。理論モデルに整合的な結果が得られており、需要側の対策として消費者への適切な情報提供を通じて需要超過=「買い急ぎ」を抑制する手法を評者は本論文から得ることができた。
 
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2015年9月21日