2008年
著者:Bower, J. A., Mateer, N.
所属:Faculty of Business and Arts, Queen Margaret University College, Edinburgh, UK, Carron Phoenix Ltd, Falkirk, UK
雑誌名・年・巻号頁:Nutrition & Food Science, 2008, 38 (2), 164-174.

  • 社会文化
  • マーケティング

<要約>

本論は、スコットランドにおける牛乳広告に対する消費者の態度と評価を検討している。その広告キャンペーンとしては、著名人を活用し、牛乳を飲んだときに付く「口ヒゲ」の画像を用いた広告(口ヒゲ広告)であり、その効果の検討を行った。
一般的に、消費者は、牛乳が栄養価の高い食品であることを認識している。しかし、消費者が牛乳に対してもつイメージは、子どもっぽい、古臭いといった否定的なイメージであることが多い。また、世界的に牛乳市場は成熟化しており、牛乳のコモディティ化問題が進行している。このような背景の中、消費者が牛乳に対して肯定的な態度や評価をもたせる広告が牛乳市場に求められている。既にアメリカでは、この問題に取り組むために”got milk”と題した口ヒゲ広告が実施されており、高い成果を収めている。2003年9月から、スコットランドにおいても牛乳のカテゴリー広告が公共機関、マスメディアで実施されている。
本論では、これらの広告の成果を評価するためにエジンバラと南ラナークシャーに居住する100名に対面調査を行った。調査の結果は高い認知とキャンペーンや登場した著名人への好ましさを示していた。つまり88人もの対象者が著名人を活用した口ヒゲ広告を視聴した経験があると回答し、そのうちの多くが「口ヒゲ」が印象的であったことを示している。
また、80名の人が広告に登場する著名人の名前を再生することができていた。さらに、対象者の多くが牛乳をモダンな食品であると回答しており、広告に著名人を活用することが牛乳の安全性や品質を保証するだけでなく、牛乳の印象を改善させていることを表している。
これらのことからスコットランドにおいても、口ヒゲ広告が一定の効果を上げていることがわかる。しかし、この広告にも、課題が残されている。それは、この広告が消費者の購買を促すまでに至っていない点である。調査の結果、対象者の広告に対する評価や態度は肯定的なものであった。しかし、これらが肯定的であったとしても、消費者が実際に牛乳を購買するとは限らない。より購買を促すためには、牛乳と健康を結びつける訴求を行う必要があるであろう。そして調査はもっと広範囲で、多くのサンプルに対して行われる必要があろうし、キャンペーン拡大のために、消費者ばかりを対象とせず、乳業メーカー、酪農家、小売業者も対象に入れることが勧められる。

<コメント>

スコットランドのこの口ヒゲ広告は有名であり、日本でも紹介されている。ポイントは、その機能的価値訴求のみならず情緒的な価値の訴求で消費者の態度を変化させるというものである。この面での取組は、日本では「牛乳に相談だ」でトライされ、講評を博したが、予算の関係等で打ちきりとなった。その効果をしっかりと検証し、情緒的価値の訴求も怠らないことが望まれる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lg1w.html

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2015年9月21日