2010年
著者:Kaiser, H. M.
所属:Department of Applied Economics and Management, College of Agriculture and Life Sciences, Cornell University
雑誌名・年・巻号頁:NICPRE: National Institute for Commodity Promotion Research & Evaluation, 2010, NICPRE00-01,R.B. 2010-01,1-36.

  • 社会文化
  • マーケティング

<要約>

アメリカにおける牛乳消費量は、このごろ毎年約1%ずつ低下している。1980年代から、牛乳消費量の低下に歯止めをかけるための活動がはじめられており、アメリカ議会は1983年に酪農プログラムを策定し、1990年には牛乳プロモーションプログラムを策定している。また、現在ではDairy Management Inc.(DMI)などの組織が設立されており、牛乳消費を向上させるために乳製品製造業者に対する投資が行われている。例えば、2009年に、DMIはCreamy Milkに対し23.3億円を投資していたり、2006年から2009年にかけては、ダノン、クラフトフード、ネスレなどの提携企業に対し総額46億円を投資したりしている。これらの投資は、各企業のプロモーションやマーケティングを行うための費用として用いられている。
乳製品製造業者と酪農業者は、このプログラムをもとに、様々なマーケティング活動に取り組んでいる。これらの取り組みは、テレビ、ラジオ、屋外広告、プリント広告、ウェブ広告といった広告に関するマーケティング行動と、乳製品企業の新製品開発の斡旋やプロモーションなどの非広告に関するマーケティング行動の二つに大別される。本研究では、1995年から2009年にかけて、乳製品製造業者と酪農業者の各マーケティング行動が、牛乳の消費量や利益を向上させているかどうかを分析した。
その結果、広告に関するマーケティング行動への支出が1%上昇することで、一人当たりの牛乳消費量が0.037%上昇し、非広告に関するマーケティング行動では、0.028%上昇していることが明らかになった。これは、この期間におけるマーケティング行動が牛乳の総消費量を通常の場合に比べて11.3%向上させていたことを示している。また、利益とコストの割合をみると、コストが1に対し利益は8.88であった。つまり、マーケティング行動における1ドルの投資が8.88ドルの正味利益を創出しているといえる。
さらに、乳製品全体に対する各マーケティング行動の効果を分析した結果、広告に関するマーケティング行動は、一人当たりの消費量を0.036%(脱脂乳製品)、0.056%(通常の乳製品)上昇させており、非広告に関するマーケティング行動では、0.016%(脱脂)、0.017%(通常)上昇させていることが明らかになった。これらの結果から乳業メーカーと酪農家の広告&非広告のマーケティング行動が明らかに牛乳の消費向上に役立っているということが判明した。そして非広告系のマーケティング活動よりも牛乳カテゴリーの広告活動の方がより多くの利益を生むこともわかった。

<コメント>

アメリカでのこの活動を下敷きに日本でも同様の活動が展開されているが、アメリカと比較すると規模があまりにも小さい。日本でももっと企業との提携活動は活発化させるべきであるし、その方向性をきちんと定める必要がある。特にTV広告は効果が高いと思われるため、今後日本でも予算を増やす必要があろうが、その前提として広告費用の最適化配分が大きな課題である。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000lg1w.html

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2015年9月21日