2014年
著者:中澤弥子
所属:長野県短期大学生活科学科教授
雑誌名・年・巻号頁:平成24年度乳の社会文化学術研究 研究報告書、2014年3月、p112−175

  • 社会文化
  • 歴史

<要約>

本研究は、文献調査とアンケート調査・聞き取り調査の2つを用いて、学校給食の普及過程、給食の中で飲用牛乳が導入された経緯を明らかにした上、牛乳・乳製品摂取の現状と意識を分析し、今後の学校給食での牛乳利用についての提言を行っている。文献調査は、長野県内の県立図書館・市町村立図書館、同教育委員会資料室、郷土資料館・博物館、味の素食の文化センター「食の文化ライブラリー」など幅広く行い、アンケートと聞き取り調査は、長野市内の3小学校で小学生の保護者・学校関係者、そして学校給食経験者である短大生に対して実施した。
よく知られているように第二次世界大戦後アメリカから脱脂粉乳・小麦粉の支給を受けて学校給食制度が整備され、脱脂粉乳が栄養改善に最も効果的と考えられて補助金が支払われたため、その後も脱脂粉乳の利用が続けられた。ただ、1957年頃から牛乳も学校給食に支給されるようになり、65年以降脱脂粉乳に替わって牛乳の供給が急激に増加して脱脂粉乳の利用は減少した。また、54年の学校給食法施行により学校給食の実施率が急増し、65年以降90%以上の小学校、70%以上の中学校で学校給食が継続されており、日本で育った多くの学生は小中学校の給食で牛乳飲用を経験している。しかし、日本人の多くは現在、依然カルシウム不足の状態にある。たとえば、家で牛乳を飲まないのが当たり前というような意識があり、給食のない日のカルシウム摂取量が推定平均必要量以下を示す小学生は60~70%、中学生では70%以上あり、本研究の調査でも短大生にはカルシウムが必要なのは成長期・学童期だけであると誤って理解している記述が相当数みられたという。家庭においてカルシウム摂取が不足している現在、学校給食で摂る牛乳は重要であることに変わりはない。
本研究のアンケート調査では、①低学年では200mlという量が多いと感じる生徒が比較的多く、残すことが多い ②男子の方が女子より牛乳が好きな割合が高く、飲みたい量も多い傾向がある という学年の差や性差を確認したうえで、筆者は学校でおいしく牛乳を飲む、飲ませるための工夫が必要と述べている。
今後の学校給食での牛乳利用を考えた場合、たとえば、牛乳の温度や牛乳を提供する機会についての工夫が求められる。夏にぬるい牛乳が嫌だという意見、逆に長野という寒い地域では特に冬に冷たい牛乳を飲むのはつらいという意見は大切だ。また、生徒には給食の時だけではなく、運動後に飲みたいという意見もあるので、休み時間や全校運動の後に摂取するなどの取り組みを行うことも考えられる。こうした取り組みは児童生徒の健康増進、及び健康教育に寄与するだろう。

<コメント>

 学校給食での牛乳の重要性は、飲用習慣の形成という意味でも、中小企業の安定的な納入先という点でも(松尾幹之『ミルクロード』日本経済評論社、1986年)、論を俟たない。だが、本研究はまず学校給食としての導入過程を詳細に明らかにした点で意義があり、今後この分野を研究する者がまず参照すべき研究といえるだろう。本研究の成果は、32ページで後述するように日本家政学会食文化研究部会編『会誌 食文化研究』2014年にも投稿された。
本研究では、アンケート調査に伴い学校給食や牛乳の摂取についての自由記述を掲載している点でも興味深い。

書籍ページURL
http://www.j-milk.jp/tool/kenkyu/berohe000000lg1w.html

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2015年9月21日