2015年
著者:上田 隆穂
所属:学習院大学経済学部

  • 社会文化
  • マーケティング

要旨

本稿では、三条市における 2014 年12 月から2015 年3 月までの市内の小中学校の給食における牛乳の試験的な中止を分析対象とし、ツイッターのデータをネガティブ、ポジティブ、ニュートラルな情報に分け、日別にカウントし、目的変数としてのデータとする。ネガティブ、ポジティブ、ニュートラルな情報がその種類別に、テレビ放送等情報源(ネットのNews、新聞、テレビ放送)の発信の影響やSNS の情報発信に反応し、どのような速度で、いつまで伝わっていくか、という伝染プロセスの解明、およびネガティブな情報の抑制効果や各情報の影響関係をグラフ化や共分散構造分析により検討を行った。
具体的な検討事項は次の通りである。
(1)ネガティブ、ポジティブ、ニュートラルな意見において、それぞれの中でもさらにどのような種類に分類できるのか。
(2)それらが、その種類別に、TV 等情報源の発信の影響やSNS の情報発信に反応し、どのような速度で、いつまで伝わっていくか。
(3)ポジティブな意見がネガティブな意見の抑制変数となりうるか。
(4)ニュートラルな意見はポジティブ、ネガティブな意見に影響を及ぼすか。
(5)ネガティブな意見に対し、ポジティブな意見は、抑制効果があるとすれば、それが何であり、どういうタイミングで、どのように抑制可能なのか。
(6)ネガティブな意見の伝播を抑える可能性の高い方法はどのようなものが望ましいのか。これに対して分析結果より示唆されることは次のようなことであった。
まず検討事項「(1)ネガティブ、ポジティブ、ニュートラルな意見において、それぞれの中でもさらにどのような種類に分類できるのか。」に関しては次の通りであった。
①メディアは対象期間後半も報じているが、ポジティブとネガティブの両ツイッターは最初の2 ヶ月間のみの反応であり、それ以降はほぼ無反応である。
②本格的な報道は、3 月終盤であることを考慮するとメディアの効果は即時性が高く、また伝染性は非常に短期間で確定し、以降は収束する。ほぼ1ヶ月内で確定することになる。
③ニュートラルの「事実」に関するツイッターは、ポジティブ、ネガティブと比較すると後半も反応が見られる点で大きく異なる。
次に内容関連では、
④ネガティブ反応で、圧倒的に多いのは「中止支持」のツイッターであり、かなり少なくなって、「態度(牛乳が嫌いなど)」、「牛乳有害説」のツイッターがある。
⑤ポジティブな反応では、「好き」「いい思い出」等の態度関連のツイッターが多い。ついで牛乳の栄養補給機能に関するもの。その他はやや無視しうるものである。ネガティブなツイッターに比べると数がかなり少ない。
⑥ニュートラルのツイッターは、単純に記事紹介が多く、客観的な感想も見られるがそれほど多くない。
(2)~(6)に関しては以下の通りであった。
「(2)それらが、その種類別に、テレビ等情報源の発信の影響やSNS の情報発信に反応し、どのような速度で、いつまで伝わっていくか。」に関しては、ネガティブ、ポジティブ、ニュートラルなツイッターは出現回数の多いメディア、特にテレビの全国放送、ネットのNews の影響を強く受ける。そしてネガティブ、ポジティブ、ニュートラルなツイッターもその内容別に複雑な相互関係を示し、メディアからの間接的な影響も受けている。例えば、1 期前のテレビの全国放送はネガティブな態度の意見と、牛乳有害説に影響を与えるが、2 期前のテレビの全国放送は直接的に態度に影響を与え、かつニュートラルな客観的感想を経由してネガティブな態度にも影響を与えている。ネットのNews も同様である。どのくらい前の情報が影響するかを見ると、極めて短く、2 期前までの情報が影響を与える程度で、3 期前の情報はもはやツイッターの意見には影響を与えていない。多くはt-1 期かt 期の情報がt 期のツイッターの意見に影響を与えるという即時の効果が中心であり、いつまでも影響し続けると言うことはなかった。
「(3)ポジティブな意見がネガティブな意見の抑制変数となりうるか。」に関しては、当期及び前期の「牛乳は栄養補給の効果がある」というポジティブなツイッターはむしろ反発を生み、牛乳に対するネガティブな態度や牛乳の給食における中止支持を煽ることにつながっているが、2 期前のこのポジティブなツイッターが当期の有害説を抑制する働きを示している。2 期前のニュートラルな事実のツイッターも当期の有害説の抑制に効果を見せているが数値が小さい。この「牛乳有害説」が最も抑制すべき意見とすれば、やはり「牛乳は栄養補給の効果がある」というツイッターが増えることが望ましい。これに対して「牛乳が好き」というポジティブなツイッターはネガティブなツイッターを抑制する効果はないと思われる。
「(4)ニュートラルな意見はポジティブ、ネガティブな意見に影響を及ぼすか。」に関しては、2期前の事実をそのまま述べたニュートラルなツイッターは当期の有害説に影響を与えており、当期および2 期前の客観的な感想も当期の有害説に影響を及ぼしている。また当期の客観的な感想はネガティブな態度にも影響を与えている。
「(5)ネガティブな意見に対し、ポジティブな意見は、抑制効果があるとすれば、それが何であり、どういうタイミングで、どのように抑制可能なのか。」に関しては、抑制効果は、前述のように2 期前の「牛乳は栄養補給の効果がある」というポジティブなツイッターが当期の有害説を抑制する働きを示している。この2 期前ということが示すようにこのようなポジティブなツイッターが出るよう早め早めにメディアで促す必要があろう。ネガティブな事件が起これば、即座に対応した情報を出すことが重要であり、まずは「牛乳は栄養補給の効果がある」という対抗情報を準備しておくことが重要である。選択メディアはこの研究結果からはテレビの全国放送であることが望ましいと思われる。
「(6)ネガティブな意見の伝播を抑える可能性の高い方法はどのようなものが望ましいのか。」については、この統合モデルだけから導き出すのは困難であるが、前述のようにテレビの全国放送で「牛乳は栄養補給の効果がある」というようなポジティブな情報を流し、同様のポジティブなツイッターでの意見が出るように促すことが重要ではないかと類推される。いずれにせよ、あらかじめこのような事態が起こりうることを想定し、即時にこれらのポジティブ情報を流せるように準備しておくことが望まれる。
以上のような結果が示唆されたが、多くの限界と課題が残されたのも事実である。これに関しては本文を参照されたい。
※平成26年度「乳の社会文化」学術研究

2016年4月15日