2014年
著者:佐々木 純一郎
所属:弘前大学大学院

  • 社会文化
  • 食文化・食生活

要旨

本報告書は飲用牛乳のフードシステムのうち流通段階に焦点をあわせ、今後の災害対策を含む社会貢献的役割の可能性をケース・スタディで検証した。
第1 章では、東日本大震災後に牛乳が再評価されたことと、大手牛乳ブランドの再生事例を紹介し、牛乳ブランドを支えるのが顧客重視の姿勢であることを明らかにした。
第2 章では、大震災後の牛乳流通の変化を、青森県八戸圏域のSM、CVS、牛乳販売店の関係者への聴き取りから明らかにした。
第3 章では、牛乳を核とした移動販売を、函館酪農公社への聴き取り調査から明らかにし、同社の移動販売を、少子化・高齢化の進む日本の社会的課題の解決策として検証した。
これら3 つの章の検証結果を分析し、これまで看過されてきた牛乳の社会インフラとしての役割を明確化し、生産者と消費者とを強い絆で結ぶ牛乳のブランド価値を考察した。
東日本大震災後の牛乳流通の復旧過程では、移動販売車、次いで地元牛乳販売店の動きが最も早く、CVSや大手スーパーがそれに続いた。 また、函館酪農公社の移動販売車は、震災時だけでなく、日常的に買物弱者への対応など、社会貢献的役割が確認できた。
従来の牛乳流通の研究では、生産者・大手乳業メーカーサイドの議論が多くみられた。
本報告書では、地域密着型の移動販売車や牛乳販売店などに着目し、あわせて顧客の視点から牛乳ブランドを議論することの重要性を確認した。
今後、人口減少・市場縮小が進むなかで、顧客の視点に立脚した牛乳業界全体のブランド論の再構築が求められる。
※平成26年度「乳の社会文化」学術研究

2016年4月15日