2013年
著者:田中喜代次
所属:筑波大学体育系

  • 健康科学
  • リラックス安眠効果

要約

本研究は,牛乳・乳製品の摂取と運動実践,ならびにその併用と睡眠との関連性を高齢者について検討することを目的におこなった。茨城県に在住する65歳以上の高齢者422名(平均年齢74.9±5.5歳;男性184名,女性238名)を分析対象とし,質問紙調査法により,平均的な1週間における牛乳,ヨーグルト,チーズなどの牛乳・乳製品の摂取量を調査した。運動量の評価にはPhysical Activity Scale for the Elderly の余暇活動量得点を使用し
た。睡眠の調査にはPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を用い,睡眠時間,入眠潜時,PSQI 総合得点から,それぞれ短時間睡眠(6 時間未満),入眠障害(30 分以上),睡眠障害(PSQI 総合得点が5.5 点以上)の有無を検討した。牛乳・乳製品の摂取量ならびに運動量は摂取/実践の有無と摂取量の多寡により3 群に分類された。また,牛乳・乳製品の摂取と運動実践の併用に対する睡眠の関連性を検討するため,摂取量の有無(多寡)および運動実践の有無から4 群に分類し,牛乳・乳製品摂取と運動実践の合成変数を作成した。統計解析には,従属変数に睡眠,独立変数に牛乳・乳製品の摂取量,運動量,ならびに牛乳・乳製品摂取量と運動実践の合成変数,共変量に年齢,性,睡眠薬の服薬有無,body mass indexを投入したロジスティック回帰分析,およびトレンド分析を適用した。統計解析の結果,総牛乳摂取量が多い群は摂取しない群に比して,入眠障害を抱えている可能性が低かった(OR 0.50; 95%CI 0.29–0.87)(P < 0.05)。また,牛乳摂取量と入眠障害のとの間には有意な直線形のトレンドがあり,摂取量が多いほど入眠障害を有している可能性が低かった(Trend P < 0.05)。運動量が豊富な者は定期的な運動習慣がない者に比して,入眠障害を抱えている可能性が低いことが示された(OR 0.53; 95%CI 0.28–1.00)(P < 0.05)。さらに,日常的に牛乳(OR 0.26; 95%CI 0.10–0.69)やチーズ(OR 0.34; 95%CI 0.14–0.82)を摂取し,かつ運動を実践している群は,牛乳やチーズの摂取習慣,ならびに運動習慣の双方がない群に比して入眠障害を有している可能性が低かった(P < 0.05)。以上の結果から,高齢者における牛乳の摂取や運動実践には入眠を促進させる効果があることが予想され,また,両要因の組み合わせにより,その効果を高めることができる可能性が考えられる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/alliance/berohe000000jgmy.html

2015年9月18日