2010年
著者:藤城有美子
所属:人間総合科学大学人間科学部

  • 健康科学
  • その他

要約

本研究では、青年期における牛乳摂取状況とパーソナリティ特性との関連について検討した。
大学生571人に対して無記名自記式質問紙を配布し、523人からの回答が得られた(回収率91.6%)。そのうち、基準に該当する464人分を分析対象とした。牛乳摂取状況を、牛乳が身近にある環境であるか否かと、摂取頻度から5群に分けて、「環境あり×高頻度摂取」群、「環境あり×中頻度摂取」群、「環境あり×低頻度摂取」群、「環境なし×中頻度摂取」群、「環境なし×低頻度摂取」群とし、健康習慣およびパーソナリティについて群間比較を行った。
「環境あり×低頻度摂取」群では、入手に時間がかかり確率が低くても、より大きな報酬を得ようとするパーソナリティ傾向が示された。ただし、報酬の魅力が高ければ、他の群と同様にリスクを回避して小さな報酬を選択していた。性格特性としては、勤勉性と外向性がより低かった。「環境なし×中頻度摂取」群では、少し先でも少し大きめの報酬を選択する傾向があった。また、報酬の魅力が低ければ確率が低くても大きな報酬を選択する傾向があるが、報酬の魅力が高ければリスクを回避して小さな報酬を選択するという傾向が見られた。性格特性としては、外向性、勤勉性、知性がより高く、協調性や情緒安定性がより低かった。
身近に牛乳があっても摂取頻度が低い群に対しては、牛乳摂取の魅力をより大きなものとしてアピールすることが効果的であると考えられる。逆に、身近に牛乳がなくても摂取頻度が高い群は、他人に合わせるよりも自ら情報を得て、目先の利益よりある程度の時間的展望を持った健康行動をとっていると推察される。青年期の集団に対して牛乳摂取を推進していくためには、摂取状況に応じた個別のアプローチを考えていく必要性が示唆された。
本研究では、牛乳摂取状況と時間選好、リスク回避、パーソナリティの関連についてある程度の有意義な知見が得られた。一方で、一斉実施の自記式質問紙調査という手法上の特性から,牛乳摂取と心理的側面のより詳細な関連については明らかにすることはできなかった。今後、より対象を絞って質的研究などの適した研究手法を用いることにより、牛乳摂取に関わるより詳細な動機や心理、思考過程などを明らかにすることができると考えられる。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html
キーワード:
牛乳摂取習慣パーソナリティ主要5因子性格検査時間選好

2015年9月18日