2010年
著者:大関武彦
所属:浜松医科大学小児科学教室

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん

研究要旨

牛乳・乳製品は小児の成長・発達において重要かつ中心的な栄養源の一つであるが、アレルギー疾患や生活習慣病への悪影響を懸念し適切な摂取がなされない場合もみられる。そこで本研究では、牛乳アレルギーと診断され牛乳・乳製品の完全除去を行っている小児に対し、経口負荷試験による適切な評価を行い不必要な除去療法を解除し、さらに食物アレルギーの治療法として本邦では報告の限られている経口免疫療法によって牛乳アレルギーの克服を試みた。その上で継続的に牛乳を摂取可能となった患児に関して、その前後における免疫学的変化や栄養学的変化、QOLの変化を評価し、小児期の牛乳摂取による身体的影響を検討した。その結果、本研究に示された方法により定量的にアレルギーの有無と程度を評価することにより半数以上の患者において食物摂取除去を解除することが可能であった。また、食物除去解除や経口免疫療法を行い牛乳摂取を継続すると有意に特異的IgE抗体は減少するなど、免疫学的な改善が得られ、さらに食生活に関するQOLが改善した。栄養学的評価の一つとしてアディポサイトカインへの影響は明らかではなくメタボリックシンドロームへの悪影響は否定的であり、さらに善玉腸内細菌の上昇傾向など、三次機能に対する有効性を示した。これらの結果から、小児期の積極的な牛乳摂取がアレルギー疾患やメタボリックシンドロームの発症促進に寄与する可能性は低いと考えられた。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html

2015年9月18日