2010年
著者:青木直人
所属:三重大大学院生物資源学研究科

  • 健康科学
  • 免疫調節・がん

研究の背景および目的

乳汁には新生児の成長に必要な様々な栄養素、生理活性物質が含まれている。とりわけ興味深いのは、主として脂肪細胞が合成・分泌するレプチン(Casabiell, Pineiro et al. 1997; Houseknecht,McGuire et al. 1997;Aoki, Kawamura et al.1999)、アディポネクチン(Bronsky,Karpisek et al. 2006;Martin,Woo et al. 2006)、レジスチン(Ilcol, Hizli et al.2008)などいわゆるアディポサイトカインと総称される一群のタンパク質がヒトやマウスの乳汁に存在することが報告され、腸管への作用を介してエネルギー代謝を制御する可能性が想定されている。牛乳中にもレプチンの存在が示唆されているが、定量法の不備から結論には至っていない(Lage,Baldelli et al.2002 ; O'Connor, Funanage et al.2003)。哺乳動物に特有な乳腺機能は種間で高度に保存されていることを鑑みると、牛乳中にもこれら一連のアディポサイトカインが存在する可能性は高いと考えられる。またヒト、マウスおよびウシ由来のレプチン、アディポネクチン、レジスチンではそれぞれ種間で80%以上の相同性があり、高次構造形成に必要なシステイン残基もほぼ完全に保存されている。さらに、ヒト消化管上皮におけるアディポサイトカインに対する特異受容体の発現も確認されているので(Yoneda, Tomimoto et al.2008)、牛乳を介して摂取されたこれらアディポサイトカインがヒトに対しても作用する可能性も十分考えられる。そこで本研究では、牛乳中に存在するアディポサイトカインを免疫化学的に同定・定量することを第一の目的とする。さらに、これらアディポサイトカインの腸管内での安定性を検討し、ヒト腸上皮培養細胞を用いてウシアディポサイトカインのヒト腸管における作用、機能発現の可能性を探る。

書籍ページURL
https://www.j-milk.jp/report/paper/commission/9fgd1p0000022nlp.html

2015年9月18日